
パソコン修理の基本:中古パソコンの故障診断
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この記事の最終更新日:2025年7月4日

愛用している中古のパソコンの調子が、最近すごく悪いんです。
突然ブルースクリーンになったり、フリーズしたり…。
修理に出したいんですけど、どこが悪いのか分からないと、修理費用がすごく高くなるんじゃないかって不安で…。
修理に出す前に、せめて「何が原因なのか」だけでも、自分で切り分ける方法ってないんでしょうか?

そのお悩み、そして、ご自身のPCと真剣に向き合おうというその姿勢、素晴らしいですね。
おっしゃる通り、PCの故障診断とは、闇雲に部品を交換することではありません。
それは、症状という「手がかり」から、真の原因を論理的に突き止めていく、まるで探偵のような「知的探求」なんです。
ご安心ください。
今日は、私たちプロの技術者が、日々実践している故障診断の思考プロセスと、具体的な診断ツールの使い方を、初心者の方でも安全に試せる形で、日本一詳しく解説していきます。
この記事を読み終える頃には、あなたは、ご自身のPCの不調の原因を、かなりの精度で特定できるようになり、修理に出すか、あるいは自分で対処するかの、賢明な判断を下せるようになっていますよ。
【思想】故障診断の哲学 - 「勘」ではなく「論理」で原因を特定する
具体的な診断手順に入る前に、すべてのトラブルシューティングの根幹をなす、最も重要な「考え方」についてお話しします。
1. 「問題の切り分け」という最強の武器
プロの故障診断は、常に**「問題の切り分け(Isolation)」**という思考法に基づいています。
これは、考えられる無数の原因を、可能性の高いものから、あるいは検証が簡単なものから、一つずつ、そして体系的に、潰していくプロセスです。
この論理的なプロセスを経ることで、私たちは、真の原因へと、着実に近づいていくことができます。
2. 常に「ソフトウェア」から疑う
問題の切り分けにおける、最初の、そして最も重要な分岐点が、**「その問題は、ソフトウェアが原因か? それともハードウェアが原因か?」**という問いです。
そして、鉄則として、**私たちは常に、まずソフトウェアの問題を疑います。**
なぜなら、ソフトウェアの問題は、OSの再インストールなど、多くの場合、コストをかけずに、ユーザー自身で解決できる可能性があるからです。
一方で、ハードウェアの故障は、部品の交換が必要となり、コストも、修理の難易度も、格段に高くなります。
ハードウェアの故障を疑うのは、あらゆるソフトウェア的な可能性を、完全に排除した後でも、決して遅くはないのです。
3. あなたの「診断ツールキット」を準備する
プロが診断に臨む際、専用の道具箱を用意するように、あなたも、いくつかの基本的な「診断ツール」を準備しましょう。
- ・ソフトウェアツール:
WindowsやmacOSに標準で搭載されている診断機能(タスクマネージャー、信頼性モニター、ディスクユーティリティなど)に加え、メモリをテストするための「MemTest86」や、ストレージの健康状態を診断する「CrystalDiskInfo」といった、無料の専門ツールも活用します。
- ・ハードウェアツール:
重要なデータのバックアップを取るための、正常に動作する「外付けストレージ」。
そして、PC内部にアクセスするための、基本的な「精密ドライバーセット」。
【フェーズ1】ソフトウェア診断 - ハードウェアを疑う前にやるべきこと
それでは、診断プロセスの第一段階、ソフトウェア的な問題の切り分けから始めましょう。
1. ウイルス・マルウェアのチェック
PCの不調の、最も基本的な原因の一つが、マルウェアへの感染です。
Windows標準の「Microsoft Defender」や、お使いのセキュリティソフトで、「フルスキャン」を実行し、システムがクリーンな状態であることを、まず確認してください。
2. 「信頼性モニター」で、不具合の“瞬間”を特定する
Windowsには、PCで発生したシステムやアプリのエラー履歴を、時系列で確認できる「信頼性モニター」という、非常に強力な診断ツールが標準で搭載されています。
スタートメニューで「信頼性」と検索し、「信頼性履歴の表示」を起動します。
もし、特定のアプリケーションが、頻繁にクラッシュしている記録(赤い×印)が見つかれば、そのアプリ自体や、関連するドライバーに問題がある可能性が高い、と切り分けることができます。
3. システムファイルの整合性をチェックする
OSの重要なシステムファイルが破損していると、あらゆる不調の原因となります。
コマンドプロンプトを管理者として開き、`sfc /scannow` コマンドを実行し、システムファイルの整合性をチェック・修復します。
さらに、`DISM /Online /Cleanup-Image /RestoreHealth` コマンドで、Windowsのコンポーネントストア自体を修復することで、OSの健全性を、より高いレベルで確保できます。
4. 究極のソフトウェア診断:OSのクリーンインストール
もし、あなたの大切なデータのバックアップが、すでに完璧に取れているのであれば、最も確実なソフトウェア診断の方法が、**OSのクリーンインストール**です。
ストレージを完全にフォーマットし、最新のOSを、まっさらな状態からインストールし直します。
もし、このクリーンな状態でも、以前と同じ不具合(例えば、ブルースクリーンが頻発するなど)が再現するのであれば、その問題の原因は、**ほぼ100%、ソフトウェアではなく、ハードウェアにある**と、断定することができるのです。
【フェーズ2】ハードウェア診断 - 各部品の健康診断を行う
ソフトウェア的な問題の可能性を排除したら、いよいよ、物理的な部品の故障を診断する、ハードウェアのフェーズに入ります。
1. メモリ(RAM)のテスト - 不可解なクラッシュの原因を探る
【主な症状】
原因不明のブルースクリーン(特に`MEMORY_MANAGEMENT`など)、アプリケーションの突然のクラッシュ、PCのフリーズといった、**一貫性のない、ランダムに見えるエラー**は、メモリの故障を疑う、典型的なサインです。
【診断方法:MemTest86】
メモリの故障を診断するための、最も信頼性が高く、世界中のプロが使う標準ツールが**「MemTest86」**です。
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1. 準備:
正常なPCを使い、公式サイトからMemTest86の無料版をダウンロードし、USBメモリに書き込んで、起動可能な「テスト用USBメモリ」を作成します。
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2. 実行:
診断したいPCで、このUSBメモリから起動します(BIOS/UEFIで起動順位の変更が必要な場合があります)。
すると、PCはOSを読み込まず、直接MemTest86のテストプログラムを起動します。
テストは自動で開始され、メモリのすべての領域に対して、膨大な回数の読み書きテストを行います。
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3. 結果の判断:
このテストは、最低でも1周(Pass 1/4など)、理想的には一晩かけて、数周実行することを推奨します。
もし、画面に一つでも、**赤いエラー**が表示された場合、その時点で、**あなたのPCのメモリモジュールが、物理的に故障していることが確定**します。
2. ストレージ(SSD/HDD)のテスト - 読み書きエラーと速度低下の原因
【主な症状】
PCの起動や、アプリの立ち上がりが異常に遅い、ファイルの読み書き中にエラーが頻発する、ファイルが破損する、といった症状は、ストレージの故障が疑われます。
HDDの場合は、「カッコン、カッコン」といった、物理的な異音が発生することもあります。
【診断方法:CrystalDiskInfo】
ストレージの自己診断機能である**「S.M.A.R.T. (スマート)Self-Monitoring, Analysis and Reporting Technologyの略。ストレージ自身が、その健康状態を監視し、記録する機能です。」**情報を、分かりやすく表示してくれる、定番の無料ツールが「CrystalDiskInfo」です。
このツールをインストールして起動すると、お使いのストレージの健康状態が、「正常」「注意」「異常」の3段階で、一目で表示されます。
もし、健康状態が**「注意(黄色)」**になっていたら、それは、ストレージに代替処理された不良セクタが発生するなど、何らかの異常が検知されており、いつ故障してもおかしくない「故障の予兆」です。
「異常(赤色)」の場合は、すでに危険な状態であり、いつPCが起動しなくなっても不思議ではありません。
ただちに、すべての重要なデータをバックアップし、新しいSSDへの交換を準備してください。
3. CPUとマザーボードのテスト - 最も診断が困難な、PCの心臓部
【主な症状】
電源を入れても、全く反応がない(No Power)。
電源は入るが、画面は真っ暗なまま(No POST)。
特定の条件下で、突然PCがフリーズしたり、再起動したりする。
これらの、原因の特定が困難な、深刻な症状は、CPUまたはマザーボードの故障の可能性があります。
【診断方法:負荷テストと温度監視】
CPUの故障を切り分けるための一つの方法が、**「負荷テスト」**です。
「Prime95」といったツールを使い、CPUに意図的に100%の負荷をかけ続け、その状態で、PCがエラーを出さずに安定して動作するかを確認します。
同時に、「Core Temp」などのツールで、CPUの温度を監視し、冷却が正しく機能しているか、異常な高温になっていないかもチェックします。
もし、負荷をかけた瞬間にPCがフリーズしたり、再起動したりするようであれば、CPU、マザーボードの電源回路、あるいは冷却システムの、いずれかに深刻な問題がある可能性が濃厚です。
ただし、これらの部品の、最終的な故障箇所の特定は、専門的な機材がなければ、非常に困難です。
【最終判断】修理か、買い替えか? - 合理的な意思決定のために
故障箇所が特定できたら、最後に、「そのPCを修理して使い続けるべきか、それとも、新しいPCに買い替えるべきか」という、経済的な意思決定を行う必要があります。
修理が合理的なケース:
故障原因が、メモリやSSDといった、比較的安価で、交換が容易な部品であった場合。
例えば、5万円で購入した中古PCのメモリ(8GB)が故障した場合、1万円程度で新しいメモリ(16GB)に交換・アップグレードすれば、以前よりも快適な環境が、非常に低いコストで手に入ります。
買い替えが合理的なケース:
故障原因が、マザーボードやCPUといった、高額で、交換が困難な部品であった場合。
その修理費用は、多くの場合、同等性能の別の中古PCが購入できてしまうほどの金額になります。
また、故障したPCが、そもそもWindows 11に対応していないような、古い世代のモデルであった場合も、修理に費用をかけるより、将来性のある、新しいPCへと投資する方が、賢明な判断と言えるでしょう。
まとめ - 故障診断は、あなたのPCへの理解を深める、最高の対話
中古パソコンの故障診断は、一見すると、難解で、専門的な行為に見えるかもしれません。
しかし、その本質は、あなたのパートナーであるPCが発している「不調のサイン」に、注意深く耳を傾け、論理的に、そして優しく、その原因を探っていく、「対話」のプロセスです。
- 1. まず「ソフトウェア」を疑う:
あらゆるハードウェアの故障を疑う前に、OSのクリーンインストールを含め、ソフトウェア的な可能性を、完全に排除しましょう。
- 2. 専門ツールで「健康診断」する:
MemTest86やCrystalDiskInfoといった、プロが使う診断ツールを活用すれば、メモリやストレージといった、主要な部品の健康状態を、あなた自身の手で、正確に診断できます。
- 3. 論理的に「修理か、買い替えか」を判断する:
故障箇所と、その修理コスト、そして、お使いのPCの将来性を、天秤にかけ、感情ではなく、合理的な基準で、次のアクションを決定しましょう。
この診断のプロセスを通じて、あなたは、PCの内部構造や、各部品の役割についての、深い知識と理解を得ることができます。
それは、あなたを、単なる「PCの利用者」から、その健康を管理し、価値を維持できる「真のオーナー」へと、成長させてくれる、貴重な経験となるはずです。
そして、もし、その診断の過程や、最終的な判断で、専門家のセカンドオピニオンが必要になった時は、いつでも私たちにご相談ください。
お客様の大切なPCにとっての、最善の道筋を、共に見つけ出すお手伝いをさせていただきます。
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