
ノートパソコンで動画編集を始めるための入門ガイド
ノートパソコンのお役立ち情報

この記事の最終更新日:2025年7月9日

先輩、私、最近、趣味で動画編集を始めたんですけど、私のノートパソコンだと、すぐに動作がカクカクになっちゃって、全然作業が進まないんです。
特に、4Kで撮影した素材をタイムラインに並べたり、エフェクトをかけたりすると、プレビューが紙芝居みたいになってしまって…。
プロが使うような、何十万円もする新品のパソコンじゃないと、快適な動画編集は無理なんでしょうか?
これから始めるのに、どんな編集ソフトを選べばいいのかもわからないですし、限られた予算の中古パソコンでも、快適に動画編集を楽しめるようになる、何か秘訣みたいなものってないですか?

その悩み、動画という素晴らしい表現の世界に足を踏み入れた、全てのクリエイターが必ず最初にぶつかる、高くそして重要な壁だね。素晴らしい挑戦だよ。
そして結論から言えば、答えは断じてノーだ。適切な知識と戦略さえあれば、中古パソコンでも、プロに匹敵する驚くほど快適な編集環境を、低コストで構築することが十分に可能なんだ。
多くの人は、動画編集をただひたすらPCのパワーで殴り合う、馬力勝負だと思っている。でも、プロの現場では必ずしもそうじゃない。
本当の快適さとは、PCの性能を100%引き出し、重いデータを軽く見せかける『ワークフローの魔法』、特に『プロキシ編集』という技術を知っているかにかかっているんだ。
今日は、その魔法の正体から、動画編集におけるCPU、GPU、メモリの本当の役割、そして君の創造性を解き放つための中古PC選びの最適解まで、日本一詳しく、そして深く解説していこう。この記事は、君のクリエイターとしてのキャリアの、最初で最も重要な教科書となるはずだ。
【思想編】それは「PCスペック」との戦いではない、「ワークフロー」の設計である
あなたが動画編集で直面しているパフォーマンスの問題。
その根本原因は、必ずしもあなたのPCの絶対的な性能不足だけにあるわけではありません。
たとえ最新最強のPCを手に入れたとしても、扱うデータや作業の進め方が非効率であれば、パフォーマンスはいとも簡単に頭打ちになります。
快適な動画編集とは、PCの性能(ハードウェア)と作業手順(ワークフロー)という二つの車輪が、完璧に噛み合って初めて実現するのです。
特に、限られた予算の中で中古パソコンを最大限に活用するためには、ハードウェアの性能をソフトウェアの工夫で補うという、知的な戦略が不可欠となります。
その戦略の中核をなすのが、「重い生のデータを、いかにして軽く扱いやすい形に変換し、編集作業を行うか」という思想です。
この思想を理解することで、あなたはスペック表の数字に一喜一憂する受動的なユーザーから、自らの手で快適な編集環境を構築する能動的なクリエイターへと進化することができるでしょう。
最大のボトルネック「タイムライン再生」と、その解決策「プロキシ編集」
動画編集における最もストレスが溜まる瞬間。
それは、編集中の「タイムライン」の再生がカクカクと、紙芝居のようになってしまうことです。
これは編集作業の根幹を揺るがし、クリエイターの思考とリズムを著しく阻害します。
この問題の多くは、現代のカメラが記録する高圧縮な動画ファイル形式(H.264 / H.265 (HEVC)非常に高い圧縮率を誇るビデオコーデックの規格。ファイルサイズを小さくできる反面、再生・編集時にはPCが複雑な解凍処理をリアルタイムで行う必要があり、CPUに大きな負荷がかかります。など)を、編集ソフトがリアルタイムでデコード(解凍)しきれないことに起因します。
この問題を根本的に解決するプロの常套手段が、「プロキシ編集 (Proxy Editing)元の高解像度で重い動画ファイル(オリジナル)とは別に、編集用に低解像度で軽い動画ファイル(プロキシ)をあらかじめ作成し、編集作業中は、この軽いプロキシファイルを使って快適に作業を進める手法。」です。
編集中はサクサク動く軽い「プロキシ」で作業を行い、最終的な書き出し(レンダリング)の時だけ、自動で高画質の「オリジナル」ファイルに差し替えて処理を行う。
Premiere Pro, DaVinci Resolve, Final Cut Proといった主要な編集ソフトは、全てこのプロキシ編集のワークフローに標準で対応しています。
この技術を使えば、数世代前の中古PCであっても、4Kあるいはそれ以上の解像度の動画を、驚くほど快適に編集することが可能になるのです。
中古パソコンで4K動画編集に挑戦するなら、この「プロキシ編集」はもはや「選択肢」ではなく「必須の作法」であると心得てください。
【第一章:ソフトウェア編】あなたの創作スタイルに合った「デジタル暗室」を選ぶ
ハードウェアを選ぶ前に、まずあなたがどのような「作品」を作りたいのか、そしてそのための「道具」となる編集ソフト(NLE)を選択しましょう。
主要なNLEはそれぞれ独自の思想と得意な領域を持っています。
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DaVinci Resolve (無料版あり):
元々はハリウッド映画の色調整(カラーグレーディング)を行うためのプロフェッショナルなツールでしたが、現在ではカット編集、VFX、音声編集、そして色調整の全ての機能を統合したオールインワンのモンスターソフトへと進化しました。驚くべきことに、その機能の大部分が無料で利用できます。これから本格的に映像制作を学ぶなら、これ以上ない最高の出発点です。
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Apple Final Cut Pro (Mac専用):
MacユーザーのためのフラッグシップNLE。「マグネティックタイムライン」という、クリップ同士が磁石のように吸着し隙間なく繋がる独自の編集思想を持ち、直感的で高速なカット編集を可能にします。Apple Siliconに完全に最適化されており、MacBook Airのようなファンレスのマシンでも驚くほど快適に動作します。
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Adobe Premiere Pro:
Adobe Creative Cloudの中核をなす業界標準のNLEです。After Effects(VFX)、Audition(音声編集)、Photoshop(画像編集)といった他のAdobe製品とのシームレスな連携(ダイナミックリンク)が最大の強みです。プロの制作現場での互換性を重視するなら、必須の選択肢となります。
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CapCut / Clipchamp:
これらは主にSNS向けの短い動画コンテンツを素早く作成することに特化した、新しい世代のエディターです。豊富なテンプレートやエフェクトが魅力ですが、長尺で複雑なプロジェクトには向きません。
【第二章:ハードウェア編】動画編集PCのスペック表の正しい読み解き方
使うソフトウェアが決まったら、いよいよそのソフトウェアを快適に動かすためのPCのスペックを見ていきましょう。
動画編集ではPCの全てのパーツが総力戦で稼働します。
CPU - シングルとマルチ、そして「QSV」という第三の力
CPUは動画編集において、編集の体感速度と最終的な書き出し時間の両方に影響します。
カット編集やテロップの追加といった一つ一つの操作の快適さには「シングルコア性能」が、そして最終的な動画のエンコード(圧縮)には全てのコアを使い切る「マルチコア性能」が、それぞれ重要になります。
さらにIntelのCPUには、「クイック・シンク・ビデオ (QSV)IntelのCPUに内蔵されている、動画のエンコード(圧縮)とデコード(解凍)を高速に実行するための専用ハードウェア回路。H.264/H.265形式の動画を扱う際に絶大な威力を発揮します。」という強力な武器が搭載されていることがあります。
QSVに対応したCPU(Intel第7世代Coreプロセッサー以降など)を搭載した中古PCは、動画の書き出しやプロキシ作成において、CPUのコア性能だけでは測れない高いパフォーマンスを発揮することがあります。
GPU - エフェクトとプレビュー再生の心臓部
GPU(グラフィックボード)は、カラーグレーディング、ノイズ除去、手ブレ補正といった高度なエフェクト処理や、タイムラインのスムーズな再生支援を担います。
GPU選びで最も重要な指標は、搭載されている専用メモリ「VRAM」の容量です。
4Kなどの高解像度動画や多くのエフェクトを重ねる場合、VRAMが少ないとすぐに容量不足に陥りパフォーマンスが著しく低下します。
快適な4K編集を目指すなら、最低でもVRAM 8GB以上を搭載したdGPU(専用GPU)が必須条件です。
メモリとストレージ - 潤沢な作業台と高速な倉庫
メモリ(RAM)は、編集中の全てのデータを一時的に広げておく「作業台」です。
複数の4Kクリップ、高音質な音声ファイル、そして編集ソフト本体とOS。これら全てがこの作業台を激しく奪い合います。
16GBはもはや最低限のラインであり、ストレスなく作業を行うなら「32GB」が現代の標準的な推奨容量です。
そしてストレージは、OSやアプリ、キャッシュファイルを置くための超高速な「NVMe SSD」と、増え続けるプロジェクトファイルや素材を保管するための大容量な第二、第三のストレージ(SATA SSDや外付けSSD)を組み合わせる階層的な構成が理想です。
中古PCを選ぶ際は、起動ドライブがNVMe SSDであり、かつThunderboltポートなどを備え、高速な外部ストレージを増設できるモデルを選びましょう。
まとめ - 最高の編集環境とはあなたの「知恵」が生み出すものである
快適な動画編集環境を手に入れることは、もはや潤沢な予算を持つプロだけの特権ではありません。
それはあなたの作るコンテンツと予算に合わせて最適なハードウェアを選び抜き、そしてその性能を100%引き出すための賢い「ワークフロー」を構築することなのです。
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1. まず「プロキシ編集」という最強の魔法を覚えよ:
PCのスペックを嘆く前に、まず重い素材を軽く扱う技術を身につけること。このワークフローの変革だけであなたの編集体験は劇的に向上します。
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2. 次にスペックの各項目が持つ「本当の意味」を知れ:
動画編集におけるCPUの役割、GPUの役割、そしてメモリとストレージの重要性。それぞれのパーツがあなたの創造性のどの部分を支えているのかを理解することで、あなたのPC選びはより戦略的なものになります。
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3. そして中古市場という「宝の山」からダイヤモンドの原石を探し出せ:
数年前にプロフェッショナルが愛用したハイエンドなワークステーションやMacBook Pro。これらは適切な知識で選び抜けば、新品のミドルレンジPCを遥かに凌駕するパフォーマンスと信頼性をあなたにもたらしてくれるでしょう。
PCの性能は、あくまであなたの創造性を形にするための道具の一つに過ぎません。
しかし優れた道具とその正しい使い方は、あなたの創作活動をより楽しくよりスムーズにし、これまで不可能だと思っていた表現の扉を開けてくれるはずです。
この記事があなたの素晴らしい映像クリエイターへの旅の、第一歩となることを心から願っています。
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