
PCを初期化(リカバリ)したい!データを残す/完全に消去する2つの方法と失敗しないための全手順
Windowsのお役立ち情報

記事の最終更新日:2025年7月14日
最近、使っているWindowsパソコンの動作がすごく遅くて、調子が悪いんです。
こういう時は「初期化」すると良いと聞いたのですが、設定画面を見てみると「個人用ファイルを保持する」と「すべてを削除する」という、2つの選択肢があって…。
写真や大事な書類を消さずに不調だけを治したいのですが、どちらを選べばいいのかよく分かりません。
それに、もしこのPCを将来売ることになったら、どちらの方法で初期化すれば個人情報が完全に消去されるのでしょうか?
失敗してデータを失くしてしまわないか、あるいはデータが消しきれないのではないかと不安です。
そのお悩みこそ、PCのメンテナンスにおける最も本質的で、そして重要な問いです。お客様は、PCの初期化という行為が単一の作業ではなく、目的によって全く異なる複数の「経路」を持つという、真実に気づかれています。
それは、例えるなら家の「リフォーム」に似ています。「家具(あなたのデータ)はそのままに、壁紙や内装(OS)だけを綺麗に張り替える」のか。それとも、「次の住人のために一度更地(完全なデータ消去)に戻す」のか。その目的によって、選ぶべき道具も手順も全く異なってくるのです。
この記事では、その2つの主要な経路、「データを残す道」と「完全に消去する道」のそれぞれについて、Windowsに標準で搭載されているツールから専門家が用いるクリーンインストールの手法まで、その全ての選択肢と失敗しないための完璧な手順を体系的に解説していきます。
初期化の哲学:それは「リフォーム」か、それとも「更地」か
PCの初期化、あるいはリカバリという言葉は非常に広範な意味を持っています。その本質を理解するためには、まずお客様が何を達成したいのか、その「目的」を明確にする必要があります。
お客様の目的は、現在の家(PC環境)に住み続けながら、その内装の汚れや不具合(システムの不調)だけを綺麗にしたいという「**リフォーム**」ですか?それとも、その家を手放し、次の住人が新しい家を建てられるように、土地の記憶を完全に消し去り綺麗な「**更地**」に戻したいということですか?
この目的の違いが、お客様が選択すべき初期化の方法論を決定づけます。前者の「リフォーム」に相当するのが、「個人用ファイルを保持する」初期化。後者の「更地」に相当するのが、「すべてを削除する」初期化です。そして、それぞれの目的を達成するためにも、いくつかの異なるアプローチが存在します。これから、その全ての選択肢を一つずつ丁寧に見ていきましょう。
黄金律:いかなる初期化の前にも、必ず外部へのバックアップを
これから解説するいかなる手順を実行する前にも、必ず守らなければならない、ただ一つの絶対的な黄金律があります。それは、「**本当に失っては困る全ての個人データを、外付けのHDDやSSD、あるいはクラウドストレージに手動でバックアップしておくこと**」です。
たとえお客様が「個人用ファイルを保持する」オプションを選択したとしても、初期化のプロセス中に予期せぬ電源断やシステムエラーが発生すれば、データが失われるリスクはゼロではありません。外部へのバックアップこそが、あなたをあらゆる最悪の事態から守る唯一にして最強の「保険」であり、「救命ボート」なのです。この安全策を講じるという前提の上で、私たちはPCの初期化という不可逆的なプロセスへと進みます。
経路A:「データを残す」リフォーム術 - システムの不調を解決する
PCの動作が遅い、あるいは不安定だが、大切な写真や書類はそのまま残したい。そんなお客様のための2つの解決策です。
方法1:標準機能「このPCを初期状態に戻す」>「個人用ファイルを保持する」
これは、Windowsに標準で搭載されている最も手軽なリフレッシュ方法です。「設定」>「システム」>「回復」から「このPCをリセット」を実行し、オプション選択画面で「**個人用ファイルを保持する**」を選択します。
このプロセスでは、以下のことが行われます。
- Windowsのシステムファイルがクリーンな状態に再インストールされます。
- お客様が作成した個人ファイル(ドキュメント、ピクチャ、デスクトップ上のファイルなど)は保持されます。
- しかし、お客様が後からインストールした全てのアプリケーション(Microsoft Office、Adobe、ゲームなど)は**完全に削除されます**。
これにより、多くのソフトウェア的な不具合やパフォーマンスの低下は改善されます。ただし、削除されたアプリケーションは初期化後にお客様自身が手動で再インストールする必要があることを覚えておいてください。
方法2(上級者向け):「新たに開始(Fresh Start)」でメーカー製アプリも一掃する
これは、よりクリーンなWindows環境を求めるユーザーのためのもう一つの選択肢です。「Windows セキュリティ」>「デバイスのパフォーマンスと正常性」の中にある「新たに開始」機能がこれにあたります。この機能もお客様の個人ファイルは保持します。しかし通常のリセットと違うのは、PCメーカーによってあらかじめインストールされていた独自のユーティリティや体験版ソフトといった、いわゆる「ブロートウェア」も可能な限り削除し、Microsoftが提供する純粋なWindows環境に近い状態で再インストールを行う点です。PCメーカー製の不要な常駐ソフトが原因でパフォーマンスが低下していると疑われる場合に、特に効果的なリフレッシュ方法です。
経路B:「完全に消去する」更地化術 - PCの売却・譲渡に備える
PCを第三者に手放す際には、お客様の個人情報やプライバシーの痕跡を、復元不可能なレベルまで完全に消し去る必要があります。そのための3つの確実な方法です。
方法1(推奨):「このPCをリセット」>「すべてを削除する」と「ドライブのクリーニング」
これもWindowsの標準機能です。「このPCをリセット」の過程で、「**すべてを削除する**」を選択します。すると次の設定画面で、「ファイルの削除とドライブのクリーニングを実行しますか?」という非常に重要な問いが現れます。ここで「**はい**」を選ぶことで、単なるファイルの削除ではなく、データの痕跡の上に意味のないデータを上書きするという、積極的なデータ抹消処理が行われます。
Windows 11は、この際にドライブがHDDかSSDかを自動で判別し、HDDであればゼロフィルによる上書きを、SSDであればTRIMコマンドの発行による安全なデータ消去をそれぞれ実行してくれます。処理には数時間を要しますが、PCを安心して手放すためには絶対に選択すべきオプションです。
方法2:メーカー製「リカバリー領域」による工場出荷状態への復元
多くのメーカー製PCには、PCを購入したまさにその日の状態に戻すための「リカバリー領域」という隠されたパーティションが存在します。PCの起動時に特定のキー(例:`F11`や`F12`など、メーカーや機種により異なる)を押すことで、専用のリカバリーメニューを呼び出すことができます。この方法のメリットは、OSだけでなくそのPCに必要な全てのドライバーや付属のユーティリティソフトウェアが自動で完璧にインストールされ、まさに「工場出荷状態」が再現される点です。一方で、メーカー独自の不要なアプリケーション(ブロートウェア)も全て復活してしまうというデメリットもあります。
方法3(究極):インストールメディアからの完全なクリーンインストール
これは、最もクリーンで最も確実な更地化の方法です。Microsoftの公式サイトから「メディア作成ツール」をダウンロードし、Windows 11のインストール用USBメモリを作成します。そのUSBメモリからPCを起動し、Windowsのセットアッププロセス中に「インストールの種類」で「カスタム」を選択します。そして、インストール先のドライブ選択画面で、既存の全てのパーティションを一つずつ選択しては「削除」していきます。ドライブ全体が1つの「未割り当て領域」になったら、そこに新しいWindowsをインストールします。これにより、リカバリー領域なども含め、ドライブ上の全ての過去の痕跡が物理的に消え去り、真の「更地」が生まれるのです。
まとめ:PCの初期化とは、あなたの「目的」を達成するための最適な「手段」を選ぶ行為である
PCの初期化、あるいはリカバリは、一つの魔法の言葉ではありません。それは、お客様が抱える問題と目的という「現在地」と「目的地」を見定めた上で、そこへと至るための複数の経路の中から、最も合理的で安全な手段をあなた自身が選択するという、論理的なプロセスなのです。
- まず、目的を明確にする: あなたが求めるのは、「不調からの回復」か、それとも「プライバシーの完全な保護」か。その目的が取るべき道の全てを決定する。
- データを残したいなら:「個人用ファイルを保持する」リセットを選ぶ。 ただし、アプリケーションは全て消去されることを覚悟の上で。よりクリーンな状態を求めるなら「新たに開始」も視野に入れる。
- データを完全に消したいなら:「すべてを削除する」リセットを選ぶ。 そして、その先の「ドライブのクリーニング」オプションを必ず有効にする。これがあなたのプライバシーを守る最後の砦となる。
- いかなる時もバックアップを怠らない: どの経路を選ぶにせよ、作業前の外部メディアへの完全なデータバックアップこそが、あなたをあらゆる後悔から守る唯一の生命線である。
PCの調子が悪い時、あるいはPCとの別れを決めた時。この記事があなたの不安を取り除き、自信を持って次の一歩を踏み出すための、信頼できるガイドとなれば幸いです。

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