社内の報告資料で円グラフをよく使うんですけど、「なんか見づらい」「情報が入ってこない」と言われてしまっていて……。
Excelの円グラフって、色を変えたりパーセントを出したりはできるんですが、プロが作った資料みたいに「美しくて分かりやすい」感じにならなくて困っています。
円グラフは「構成比を直感的に伝える」のが得意だけど、少しルールを外すと一気に「残念なグラフ」になりやすいんだよね。
この記事では、Excelだけでできる範囲で、見た目も情報もプロっぽく整える「7つの鉄則」と、具体的な設定手順、仕上げ前のチェックリストまで整理していこう。テンプレート的に覚えておけば、どの資料でもすぐに再現できるようになるよ。

目次
この記事のゴールと想定読者

このページのゴールは、Excelの円グラフを「なんとなくそれっぽいグラフ」から、「プレゼンやレポートでそのまま使える、プロっぽい一枚」に変えるための考え方と作り方を、テンプレートとして身につけてもらうことです。
特に次のような人を想定しています。
- 社内資料やクライアント向けレポートを、ExcelとPowerPointで作っている人。
- 円グラフをよく使うが、「色がごちゃつく」「何を言いたいのか伝わりづらい」と感じている人。
- デザインの専門知識はないが、最低限のルールだけ押さえて「外に出しても恥ずかしくない」グラフにしたい人。
ここで紹介する七つの鉄則とExcelの設定手順は、一度慣れてしまえば、どのテーマの円グラフにも再利用できます。途中にはチェックリストも用意しているので、「作り終わったグラフを最後にセルフレビューするツール」として活用してください。
なぜ円グラフが「残念」に見えるのか

円グラフの得意分野・苦手分野
円グラフは、全部で100パーセントになるデータの「構成比」(全体をどのような割合で分けているか)を直感的に見せるのが得意なグラフです。逆に言うと、次のようなケースはそもそも円グラフに向いていません。
- 時間の経過による推移を示したい(売上の増減など)。
- カテゴリがたくさんあり、細かい違いを比較したい。
- 複数のグループを同時に比較したい(複数年比較など)。
こうしたケースでは折れ線グラフや棒グラフの方が適しています。円グラフを選ぶ前に、「自分が伝えたいのは構成比なのか、推移なのか、比較なのか」を一度立ち止まって確認するだけで、「そもそも用途に合っていない円グラフ」を避けることができます。
ありがちなNGパターン
残念な円グラフには、共通する特徴がいくつかあります。例えば次のようなものです。
- カテゴリが10個以上あり、細かい切り身だらけになっている。
- カラフルすぎて、どの色がどの項目なのか一目で追えない。
- グラフの横に長い凡例があり、「色を見て、凡例を見て、またグラフに戻る」を繰り返さないと理解できない。
- 3Dや爆発(円を飛び出させる表現)が使われ、角度によって面積の印象が歪んでいる。
これらはすべて、Excelが悪いのではなく、「初期設定のまま」「なんとなくのカスタマイズ」で作ってしまった結果です。逆に言えば、少しのルールを決めておくだけで、同じExcelでも一気に「プロっぽい」円グラフになります。
プロっぽく見せる円グラフ作成の7つの鉄則

ここからは、Excelで円グラフを作るときに必ず意識しておきたい七つの鉄則を紹介します。全部を一度に完璧に守る必要はありませんが、「最低でもここだけは押さえる」という指針として読み進めてください。
- メッセージは一枚一メッセージに絞る。
- カテゴリ数は最大6個までに抑え、残りは「その他」にまとめる。
- 色数を絞り、「目立たせたい部分」だけアクセント色にする。
- ラベルと数値は「目線の動き」が最小になるよう配置する。
- 3D・爆発・過度な影などの装飾は使わない。
- 値の大きい順(または意味のある順)に並べ、起点角度も調整する。
- グラフタイトルで「結論」を一文で言い切る。
鉄則1:メッセージは一枚一メッセージに絞る
円グラフを作る前に、「このグラフを読んだ人に、何を一言で持ち帰ってほしいか」を決めます。例えば次のようなイメージです。
- 「Aプランが全体の半分以上を占めている」。
- 「上位3カテゴリで全体の8割を占めている」。
- 「オンライン比率が前年より大きく増えている」。
この一文が決まると、「色でどこを強調するか」「タイトルに何を書くか」「補足テキストで何を説明するか」が自動的に決まります。逆に、メッセージが曖昧なままだと、どこを見ればよいか分からない「情報だけ詰め込んだ円グラフ」になってしまいます。
鉄則2:カテゴリは最大6個、その他でまとめる
人間の目は、細かく分割された円の差を見分けるのが得意ではありません。カテゴリが7個を超えるようなら、少なくとも次のような工夫を検討します。
- シェアの小さいものを合算して「その他」として扱う。
- 上位3〜5カテゴリだけを円グラフにし、残りは別の表で補足する。
「その他」を作るときは、どの項目をまとめたのかを脚注や本文で補足しておくと、資料としての信頼性も保てます。
鉄則3:色数を絞り、意味のある色だけ使う
Excelの既定色をそのまま使うと、派手でカラフルな円グラフになりがちです。しかし、読者の立場から見ると、色は「違いを表すため」ではなく「どこを見ればよいかを教えるため」に使うほうが親切です。
- ベースとなる落ち着いた1色(グレーや淡いブルー)を、ほとんどのカテゴリに使う。
- 強調したいカテゴリにだけ、アクセントカラー(濃い青やオレンジなど)を使う。
こうすることで、グラフを見た瞬間に「どこが主役なのか」が直感的に伝わります。逆に全てをカラフルにしてしまうと、主役が分からなくなってしまいます。
鉄則4:ラベルと数字は「読み手の目線」で配置する
円グラフでは、カテゴリ名と割合(パーセント)をどこに表示するかが重要です。読みやすさを優先するなら、次のような順番で検討します。
- 可能なら、円の外側にカテゴリ名+パーセントを直接表示する(凡例を使わない)。
- スペースが足りない場合は、重要なカテゴリだけラベルを付け、残りは凡例にする。
- 文字サイズを小さくしすぎない(本文より一段階小さい程度を目安にする)。
「色→凡例→グラフ→また凡例」のように、視線が行ったり来たりする構造を避けると、それだけで見やすいグラフになります。
鉄則5:立体・爆発・影は封印する
3D円グラフや「爆発」効果は、瞬間的には派手に見えますが、面積の印象が歪んでしまい、「どのカテゴリが大きいのか」を正確に読み取れなくなります。影やグラデーションも同様で、装飾としては楽しいものの、ビジネス資料では避けたほうが無難です。
基本的には、次の方針を守ると安定します。
- 2Dのシンプルな円グラフを使う。
- 影や立体感は付けず、フラットな塗りだけにする。
見た目のインパクトよりも、「正確さ」と「読みやすさ」を優先するのがプロのグラフです。
鉄則6:ソートと起点角度で「読みやすい順番」にする
同じ円グラフでも、カテゴリの順番と開始角度しだいで「読みやすさ」が大きく変わります。一般的には、次のような並びが理解しやすくなります。
- 値の大きい順に並べる(左上から時計回り)。
- 最も注目させたいカテゴリを、読み手の視線が集まりやすい右上〜右側あたりに配置する。
Excelでは、行や列を並べ替えたあとで円グラフを作ると、その順番がそのまま反映されます。また、グラフの書式設定で「第一扇形の角度」を調整すると、どの位置から円をスタートさせるかを制御できます。
鉄則7:グラフタイトルで結論を言い切る
グラフタイトルに「売上構成比」などの名詞だけを書くと、読者は「で、何が言いたいのだろう」と考えるところからスタートすることになります。プロの資料では、「タイトルは結論を一文で言い切る」ことが多いです。
- 悪い例:「販売チャネル別売上構成比(2025年)」。
- 良い例:「オンライン比率が全体の6割に増加(2025年)」。
こうすることで、グラフを見た瞬間に「どんなメッセージを読み取るべきか」が分かり、その後の説明もスムーズになります。
Excelでの円グラフ作成ステップ(基本編)

鉄則を押さえたところで、実際にExcelで円グラフを作るときの基本ステップを整理します。ここではWindows版Excelを前提にしますが、Mac版でも考え方はほぼ同じです。
ステップ1:元データの整え方
まずは元データの表を整えます。最低限、次のルールを守るとグラフ化しやすくなります。
- 1列目に「項目名」、2列目に「数値」を並べる(数値はパーセントでなくてもよい)。
- 合計行はグラフに含めないので、別行に分けるか、合計を表示しないようにする。
- カテゴリ数が多い場合は、この時点で「その他」を作ってまとめる。
Excelの並べ替え機能を使って、値の大きい順に並べ替えておくと、そのまま「読みやすい順番」の円グラフが作れます。
ステップ2:円グラフを挿入する
データの範囲(項目名と数値)を選択したら、リボンの挿入タブから円グラフを選びます。ここでは、シンプルな2D円グラフを選択するのがおすすめです。
挿入直後は、Excelの既定デザインが適用された状態なので、次のような処理を行っておきます。
- 3Dや影付きになっていたら、2Dのフラットなデザインに変更する。
- グラフエリアを広げ、凡例やラベルが窮屈にならないようにする。
ステップ3:レイアウトとラベルを整える
続いて、ラベルや色を整えていきます。最初にやると分かりやすいのは次の項目です。
- データラベルで「カテゴリ名」と「パーセンテージ」を表示する。
- 凡例が不要なら削除し、グラフの横スペースを広げる。
- ベースとなる薄い色を全体に設定し、強調したいカテゴリだけアクセントカラーに変更する。
最後に、グラフタイトルを「結論型」の文に書き換えれば、基本形は完成です。
見栄えを一段引き上げるExcelのひと工夫
基本編だけでもかなり見やすくなりますが、もう一段上のクオリティを目指すなら、次のような工夫もおすすめです。
- 背景を真っ白にし、グリッド線や余計な枠を消してシンプルにする。
- 円グラフをやや左寄せに配置し、右側に短い解説テキストを置ける余白を確保する。
- 資料全体のフォントや色に合わせて、グラフの文字や線の色も統一する。
これらは、Excelの設定というより「資料デザイン全体の統一感」に関わるポイントです。PC STOREのように会社でベースカラーが決まっている場合は、その色をアクセントに使うだけでも、一気に「ブランド感」のあるグラフになります。
「それは危険!」避けたい円グラフの例
最後に、実務の現場でよく見かける「避けたい円グラフ」の特徴を整理しておきます。当てはまるものがあれば、前半で紹介した鉄則を使って修正してみてください。
- カテゴリが10個以上あり、文字が重なったり、読めないほど小さくなっている。
- すべてのカテゴリが派手な別色で塗られていて、主役が分からない。
- 3D、爆発、影、派手なグラデーションが全部入りになっている。
- タイトルが「売上構成比」のような名詞だけで、結論が分からない。
- 凡例がグラフの下に3行以上並び、読み手が何度も視線を往復させる必要がある。
このようなグラフは、「作った本人だけが分かるグラフ」になりがちです。資料は、「初めて見る人」「背景を知らない人」が読むことを前提に設計するのが鉄則です。
円グラフチェックリスト&テンプレート
最後に、実務で使いやすいチェックリストを用意しました。円グラフを作り終えたら、このリストでさっと確認してから資料に貼り付けるだけで、品質を一定以上に保てます。
- このグラフのメッセージを一文で言えるか(タイトルに反映されているか)。
- カテゴリ数は6つ以内か(それ以上なら「その他」でまとめるなどの工夫があるか)。
- 色数は必要最小限か(ベース1色+アクセント1色程度になっているか)。
- 主役のカテゴリが、色や位置で一目で分かるようになっているか。
- ラベルの文字が小さすぎないか(読み手が拡大しなくても読める大きさか)。
- 3D・爆発・影など、面積の印象を歪める装飾を使っていないか。
- 凡例に頼りすぎず、可能な範囲でグラフの近くにラベルを配置しているか。
繰り返しになりますが、円グラフの目的は「構成比を直感的に伝える」ことです。作り手の自己満足ではなく、「相手が一秒で理解できるかどうか」を基準にチェックすると、自然と良いグラフに近づきます。
よくある質問
円グラフとドーナツグラフは、どちらを使うのがおすすめですか。
どちらも構成比を示すという意味では似ていますが、1系列だけなら円グラフ、複数系列を重ねて見せたいときはドーナツグラフが向いています。ただし、情報量が多くなるほど読みづらくなるので、基本的には「1枚1メッセージ」を守り、どうしても必要な場合だけドーナツグラフを検討するのがおすすめです。
パーセンテージを表示するとごちゃつくので、数字は消しても良いですか。
数字を完全に消してしまうと、「どのくらいの差なのか」が読み取れなくなり、説得力が落ちてしまいます。重要なカテゴリだけパーセンテージを表示し、それ以外はラベルだけにする、という折衷案もあります。どうしても窮屈な場合は、横に小さな表を添えて数字を補う方法も有効です。
Excelの既定テーマのままでも大丈夫でしょうか。
既定テーマでも使えないわけではありませんが、そのままだと色数が多くカラフルになりすぎることが多いです。少なくとも、アクセントに使う色を1〜2色に絞り、残りは落ち着いたグレー系や淡い色に揃えるだけでも、印象はかなり変わります。会社やブランドのカラーがある場合は、その色をアクセントにするのもおすすめです。
少ない枚数の資料でも、ここまでこだわる必要はありますか。
グラフのクオリティは、資料全体の信頼感に直結します。ページ数が少ない資料ほど、一枚一枚の重みが増すので、むしろ基本のルールを押さえておく価値が高くなります。今回紹介した鉄則は、一度パターン化してしまえば毎回すぐ再現できるので、「最初だけ少しだけ時間をかけてテンプレートを作る」という感覚で取り入れてみてください。
まとめ
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Point
円グラフは、構成比を直感的に伝えるのが得意な一方で、カテゴリや色を盛りすぎると一気に「残念なグラフ」になります。まずは「この一枚で何を伝えたいか」を決め、用途に合う場面でだけ使うことが大切です。
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Point
プロっぽく見せるための七つの鉄則は、「カテゴリ数を絞る」「色を整理する」「3Dなどの装飾を封印する」「タイトルで結論を言い切る」といった、どれもExcelだけで完結できる工夫です。一度テンプレート化してしまえば、どの資料でもすばやく再現できます。
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Point
作り終わった円グラフは、チェックリストで「読み手の目線」で最終確認を行うことで、抜け漏れや自己満足のグラフを防げます。Excelの操作テクニックよりも、「相手が一秒で理解できるかどうか」を基準に仕上げることが、結果的に一番の近道です。






