
Excelで財務分析!基本的な財務モデルの作成法
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記事の最終更新日:2025年7月14日
最近スモールビジネスを始める準備をしているのですが、融資を受けるためにしっかりとした事業計画書が必要なんです。
特に「財務モデル」や「収支計画」の作成で完全に手が止まってしまって…。
Excelで簡単な売上予測の表は作れるのですが、そこからどうやって専門家が作成するような「損益計算書」や「貸借対照表」といった本格的な財務諸表に繋げていけばいいのか全く分かりません。
Excelという身近なツールを使って、説得力のあるプロフェッショナルな財務モデルを自力で作成するための体系的な方法論を教えていただけないでしょうか?
そのお悩み、ビジネスを始めたばかりの方が必ず直面する非常に重要で、かつ素晴らしい課題意識です。
請求書は単なる「お金の要求書」ではありません。
それはあなたの仕事の品質と信頼性を映し出す「顔」であり、法的な要件を満たす必要のある極めて重要な「公式文書」なのです。
そしてお察しの通り、Excelの真価はそれを単なる「表計算ソフト」としてではなく、請求書発行という業務を自動化・効率化するための「ミニアプリケーション開発ツール」として捉えることで初めて発揮されます。
この記事では、インボイス制度の要件を完全に満たす請求書の基本構造から始め、VLOOKUP関数による顧客情報や商品単価の自動入力、入力規則によるヒューマンエラーの徹底的な防止、そして最終的にはVBAマクロによる「ワンクリックPDF化」の概念まで、あなたの請求書業務を手作業の職人技から、洗練された工業製品の生産ラインへと変革させるプロフェッショナルな知識の全てを解説します。
財務モデルの哲学:それはビジネスの「魂」を数値で写し取るデジタルな肖像画
財務モデルとは単なる過去の実績や未来の予測を数字で並べた表ではありません。
それはある企業のビジネス活動、すなわち収益を生み出し費用を支払い投資を行い資金を調達するという、一連の経済的な営みの全てを相互に関連付けられた数式の体系として再現した、「ビジネスのデジタルな分身(デジタルツイン)」です。
優れた財務モデルは過去の財務状況を正確に物語るだけでなく、未来の様々な可能性をシミュレーションするための強力な羅針盤となります。
「もし売上が計画よりも10%下振れしたら利益とキャッシュフローはどうなるのか?」
「もし新たな設備投資を行ったらそれは何年で回収できるのか?」
財務モデルはこうした経営者の根源的な問いに対して、客観的で定量的な答えを与えてくれます。
Excelで財務モデルを構築する行為とは、あなたのビジネスアイデアという情熱やビジョンを、投資家や銀行が理解できる普遍的な財務という「言語」へと翻訳する知的で創造的な作業なのです。
第一章:設計思想 - プロが実践する財務モデルの美しい建築様式
優れた建築物が強固な設計思想の上に成り立つように、優れた財務モデルもまたその構造的な美しさと論理的な一貫性によってその価値が決まります。
メンテナンス性が高く誰が見てもその構造が理解できる、プロフェッショナルなモデルは以下の原則に基づいて構築されます。
シートの役割分担
全ての計算を一枚のシートに詰め込むのは最悪の設計です。
目的別にシートを明確に分割します。
- 前提シート(Assumptions): モデルの全ての基礎となる変数(例:売上成長率、原価率、金利、税率など)をこのシートに一元的に集約します。モデル内のいかなる計算式もこのシートの値を参照するようにし、数式の中に直接数値を打ち込む(ハードコーディングする)ことは絶対に避けます。これにより前提条件の変更がモデル全体に瞬時に反映されるようになります。
- 財務三表シート(P/L, B/S, C/F): 損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書はそれぞれ独立したシートとして作成します。
- サポートスケジュールシート: 減価償却費の計算や借入金の返済スケジュールといった、財務三表の特定の項目を算出するための補助的な計算はこの専用シートにまとめます。
書式の統一
モデルの可読性を高めるため、セルの書式をそのデータの種類に応じて統一します。
これは世界中の金融プロフェッショナルが暗黙のうちに共有している共通言語です。
- 青色の文字: 前提シートからの参照や手入力された固定の数値(ハードコードされた値)。
- 黒色の文字: 同じシート内の他のセルを参照している計算式。
- 緑色の文字: 他のシートから数値を参照している計算式。
この色分けルールに従うだけで、その数値が「入力値」なのか「計算結果」なのかが一目で判別できるようになります。
第二章:三表連携モデルの構築 - 損益計算書(P/L)から始める
それでは実際に過去2年、未来3年の計5年間の財務三表モデルを構築していきます。
全ての起点となるのは企業の儲けを示す損益計算書(P/L)です。
ステップ1:売上高と費用の予測
まずモデルのトップラインである売上高を予測します。
前提シートに設定した「売上成長率」を参照し、「`=前期の売上高 * (1 + 売上成長率)`」という数式で将来の売上高を計算します。
次に売上原価や販管費(販売費及び一般管理費)を予測します。
これらも前提シートに設定した「原価率」や「販管費率」(あるいは固定額)を参照して計算します。
「`=当期の売上高 * 原価率`」といった具合です。
ステップ2:各利益の算出
これらの基本的な収益と費用の予測値から、各段階の利益を算出していきます。
売上総利益は「`=売上高 - 売上原価`」。
営業利益(EBIT)は「`=売上総利益 - 販管費 - 減価償却費`」。(減価償却費は後述するサポートスケジュールから参照します)
そして支払利息を差し引き法人税を計算すれば、最終的な当期純利益が算出されます。
この当期純利益こそが、後で貸借対照表とキャッシュフロー計算書を繋ぐ極めて重要な「結節点」となります。
第三章:貸借対照表(B/S)とキャッシュフロー計算書(C/F)の連動
P/Lが完成したら次はB/SとC/Fを構築し、それらを相互に連動させていきます。
ここが財務モデリングの最も難しく、しかし最も面白い部分です。
ステップ3:貸借対照表(B/S)の作成とP/Lとの連携
B/Sは「資産 = 負債 + 純資産」という会計上の絶対的な黄金律が、常に成り立つように作成されなければなりません。
将来の売掛金や買掛金といった項目は、前提シートに設定した回転日数などを使ってP/Lの売上高や原価と連動させて予測します。
そして最も重要な連携が「純資産」の項目にある「利益剰余金」です。
当期の利益剰余金は「**`=前期の利益剰余金 + 当期の純利益 - 当期の配当金`**」という数式で計算されます。
この数式の中の「当期の純利益」こそが、先ほどP/Lで算出した最終的な利益なのです。
これによりP/LとB/Sは初めて固い絆で結ばれます。
ステップ4:キャッシュフロー計算書(C/F)の作成
C/FはP/Lの当期純利益からスタートし、そこに実際には現金の支出を伴わない費用(減価償却費など)を足し戻し、そしてB/S上の運転資本(売掛金、買掛金、在庫など)の増減を加味することで、営業活動によるキャッシュフローを算出します。
次に投資活動(設備投資など)や財務活動(借入や返済、配当など)による現金の出入りを計算します。
これらを全て合算したものが「当期の現金の増減額」となります。
ステップ5:最終連結と「バランス」の確認
ここが最後のそして最も感動的な瞬間です。
C/Fで計算された「当期の現金の増減額」を前期のB/Sの現金残高に加算したものが「**当期の期末現金残高**」となります。
そしてこのC/Fで算出された期末現金残高を、当期のB/Sの資産の部にある「現金及び預金」のセルに数式でリンクさせます。
もしあなたの全てのロジックと数式が正しければ、この瞬間B/Sの「資産の合計」と「負債・純資産の合計」が完全に一致し、バランスシートは「バランス」します。
モデルの貸借が一致したというこの事実こそが、あなたの財務モデルが論理的に破綻なく構築されたことを証明する唯一の証なのです。
まとめ:財務モデルとは、あなたのビジネスの「未来」をシミュレーションする航海計器である
Excelで財務モデルを構築する技術は単なる表計算のスキルではありません。
それはビジネスの複雑な現実を会計という普遍的な言語で翻訳し、その未来の姿を論理的に予測し、そしてより良い未来へと導くための意思決定を支援する、現代のビジネスパーソンにとって必須の思考のフレームワークです。
- 思想を学ぶ: 財務モデルの神髄は財務三表(P/L, B/S, C/F)が相互に有機的に連動するという、その美しい構造を理解することにある。
- 設計を徹底する: 全ての前提条件は「前提シート」に集約しハードコーディングを排除する。書式を統一し誰が見ても理解できる可読性の高いモデルを心がける。
- P/Lから構築を始める: 全ての起点となる当期純利益をまず算出する。これがB/SとC/Fを繋ぐ重要な結節点となる。
- 貸借をバランスさせる: C/Fで計算された期末の現金残高をB/Sの現金勘定へとリンクさせる。そして資産と負債・純資産の合計が一致した時の知的な喜びを味わう。
最初は複雑で難解に感じられるかもしれません。
しかし一度この三表連携モデルの構築プロセスをマスターすれば、あなたはどんなビジネスの状況においてもその財務的な本質を見抜き、自信を持って未来への舵取りを行えるようになるでしょう。
Excelという最も身近なツールの中に眠るその計り知れない力を、ぜひあなたのビジネスの成功のために解き放ってください。

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