
Accessでデータベース作成!初心者向けステップバイステップガイド
Officeのお役立ち情報

この記事の最終更新日:2025年7月1日

お店の顧客リストや売上の管理を、ずっとExcelでやっていたんですけど、データが増えてきて、もうぐちゃぐちゃで…。
同じお客様の情報を何度も入力してしまったり、どの情報が最新か分からなくなったりして、ミスも増えてきました。
「Access(アクセス)」っていうソフトを使えば、もっとうまく管理できるって聞いたんですけど、なんだかすごく難しそうで、プログラマーさんが使うもの、っていうイメージがあって…。
私のような初心者でも、使えるようになるんでしょうか?

そのお悩み、まさにExcelでのデータ管理に限界を感じ始めた、すべての方が通る道です。
そして、その問題を解決するためにこそ、Microsoft Accessは存在するんですよ。
ご安心ください。
Accessは、確かにプロが使うような、非常に強力なデータベースソフトですが、その基本は、正しい手順で一つずつ学んでいけば、決して難しいものではありません。
今日は、なぜExcelではなくAccessを使うべきなのか、その根本的な理由から、あなたのお店の「顧客管理データベース」を、実際にゼロから作り上げていく全手順を、世界一優しく、そして日本一詳しく解説していきます。
この記事を読み終える頃には、あなたはもうAccessを恐れることなく、自分だけの業務改善ツールを作る楽しさに、きっと目覚めているはずですよ。
【思想】なぜExcelではなくAccessなのか? - 「表計算」と「データベース」の決定的違い
具体的な作成手順に入る前に、最も重要な「なぜExcelではダメなのか?」という問いに、明確な答えを提示します。
ExcelとAccessは、見た目が似ている部分もありますが、その根底にある設計思想は、全く異なるのです。
Excelの限界:スプレッドシートが抱える「データの重複」と「不整合」
Excelは、その名の通り「スプレッドシート(表計算ソフト)」です。
個々のセルの計算や、一枚の大きな表を作成することには、絶大な威力を発揮します。
しかし、顧客情報、商品情報、売上情報といった、複数の「種類の異なるデータ」を、一つのシートで管理しようとすると、必ず問題が発生します。
例えば、売上を記録するたびに、その顧客の氏名、住所、電話番号を毎回入力していくと、同じ顧客の情報が、シート上に何行にもわたって重複して存在することになります。
もし、その顧客の住所が変更になった場合、あなたはそのシート上にある、すべての行の住所を、手作業で修正しなければなりません。
一つでも修正を忘れると、「Aさんの住所は、ある行では古いままで、別の行では新しい」という、**「データの不整合」**が発生し、情報の信頼性が完全に失われてしまうのです。
Accessの神髄:「リレーショナルデータベース」という解決策
Accessは、この問題を根本から解決するために作られた**「リレーショナルデータベース管理システム(RDBMS)複数のデータ表(テーブル)を、互いに「関連付け(リレーション)」ながら、大量のデータを効率的に、そして矛盾なく管理・分析するためのシステムです。」**です。
難しい言葉に聞こえますが、考え方は非常にシンプルです。
それは、**「種類の違うデータは、別々のノートに、それぞれ一回だけ書く」**という原則です。
例えば、「顧客ノート」「商品ノート」「売上ノート」という、3冊の専用ノートを用意します。
- ・顧客ノート(顧客テーブル): お客様の氏名や住所は、このノートに一度だけ記録します。
- ・商品ノート(商品テーブル): 商品名や価格は、このノートに一度だけ記録します。
- ・売上ノート(売上テーブル): 売上が発生したら、「いつ、どのお客様が、どの商品を、いくつ買ったか」を、顧客ノートや商品ノートに書かれている「番号(ID)」を使って記録します。
このように、データを種類ごとに分離し、番号(ID)で関連付けることで、情報の重複が一切なくなります。
顧客の住所が変更になっても、「顧客ノート」の一箇所を修正するだけで、すべての売上データから、常に最新の正しい住所を参照できるようになるのです。
この、データの「一元管理」と「整合性の維持」こそが、Excelにはない、Accessの持つ、最も強力で本質的な価値です。
【Accessの構成要素】4つの基本オブジェクトを理解する
Accessのデータベースは、主に4種類の「オブジェクト」と呼ばれる部品を組み合わせて構築します。
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1. テーブル (Tables): データの「格納庫」
すべてのデータの基礎となる、情報を格納するための「表」です。
顧客テーブル、商品テーブルなど、データの種類ごとに作成します。
データベース設計の、最も重要な土台です。
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2. クエリ (Queries): データの「抽出・分析ツール」
テーブルに保存された膨大なデータに対して、「〇〇という条件に合うデータだけを見たい」「複数のテーブルを結合して、集計したい」といった、様々な「質問(クエリ)」を投げかけ、その結果を抽出・分析するための道具です。
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3. フォーム (Forms): データの「入力画面」
テーブルに直接データを入力するのは、間違いの原因となります。
フォームは、PCに詳しくない人でも、安全かつ直感的に、データを入力・閲覧・編集できるための、専用の「ユーザーインターフェース(入力画面)」です。
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4. レポート (Reports): データの「印刷・出力ツール」
テーブルやクエリのデータを基に、請求書、納品書、宛名ラベル、売上集計表といった、美しく整形された「帳票」を、印刷またはPDFとして出力するための道具です。
この4つのオブジェクトの関係は、「テーブルという倉庫から、クエリという道具で材料を取り出し、フォームという作業場で加工し、レポートという形で製品を出荷する」という、工場の生産ラインに例えることができます。
【実践】「顧客管理データベース」をゼロから作成する全手順
それでは、ここから、あなたのお店の「顧客管理データベース」を、実際にゼロから作成していくプロセスを、ステップバイステップで見ていきましょう。
ステップ1:データベースの設計 - すべては「設計図」から始まる
家を建てる前に、まず設計図を描くのと同じように、データベース作成も、最初の「設計」が最も重要です。
【情報の洗い出しと「正規化」】
まず、管理したい情報をすべて洗い出します。
「顧客の名前、住所、電話番号」「いつ、誰が、どの商品を、いくつ、いくらで買ったか」…。
次に、この情報を、前述の「リレーショナルデータベース」の考え方に基づき、重複がなくなるように、意味のあるグループに分割していきます。
このプロセスを、専門的には**「正規化」**と呼びます。
今回は、以下のような4つのテーブルに分割してみましょう。
- 1. 顧客テーブル: 顧客の情報を格納する。
- 2. 商品テーブル: 商品の情報を格納する。
- 3. 受注テーブル: 「いつ」「誰が」注文したか、という受注のヘッダー情報を格納する。
- 4. 受注明細テーブル: 一つの受注に、どの商品が、いくつ含まれているか、という明細情報を格納する。
【フィールド(項目)と主キーの決定】
各テーブルに、どのようなデータ項目(フィールド)が必要かを定義し、各レコード(行データ)を一位に特定するための「主キー(Primary Key)テーブル内の各レコード(行)を、一意に、そして重複なく識別するための、特別なフィールド(列)です。社員番号や商品コードなどがこれにあたります。」を設定します。
テーブル設計図:
T_顧客: [顧客ID(主キー), 氏名, 郵便番号, 住所, 電話番号]
T_商品: [商品ID(主キー), 商品名, 単価]
T_受注: [受注ID(主キー), 受注日, 顧客ID(外部キー)]
T_受注明細: [明細ID(主キー), 受注ID(外部キー), 商品ID(外部キー), 数量]
ここで出てきた「外部キー(Foreign Key)別のテーブルの主キーを参照するためのフィールドです。例えば、「受注」テーブル内の「顧客ID」は、「顧客」テーブルの主キーを参照することで、どの顧客からの注文なのかを関連付けます。」が、テーブル同士を繋ぐ、重要な「架け橋」となります。
ステップ2:テーブルの作成 - データの「器」を作る
設計図が完成したら、いよいよAccessを起動し、テーブルを作成していきます。
- 1. Accessを起動し、「空のデータベース」を選択します。
- 2. データベースのファイル名(例: 顧客管理.accdb)を入力し、「作成」ボタンをクリックします。
- 3. 最初から表示されている「テーブル1」のタブを右クリックし、「デザインビュー」を選択します。
- 4. テーブル名を「T_顧客」として保存します。
- 5. デザインビューで、設計図通りにフィールド名と「データ型」を設定していきます。「顧客ID」は「オートナンバー型」に、「氏名」や「住所」は「短いテキスト型」、「電話番号」は「数値型」といった具合です。データ型を正しく設定することが、データの整合性を保つ上で非常に重要です。
- 6. 「顧客ID」フィールドを選択し、リボンの「主キー」ボタンをクリックして、主キーに設定します。
- 7. 同様の手順で、「T_商品」「T_受注」「T_受注明細」の、合計4つのテーブルをすべて作成します。
ステップ3:リレーションシップの設定 - テーブル同士を「繋ぐ」
4つの独立したテーブルが完成したら、次に、それらの間を「外部キー」で関連付け、一つの連携したデータベースとして機能させるための、「リレーションシップ」を設定します。
- 1. 「データベースツール」タブの「リレーションシップ」ボタンをクリックします。
- 2. 作成した4つのテーブルをすべて追加します。
- 3. 例えば、「T_顧客」テーブルの「顧客ID」フィールドを、マウスでドラッグし、「T_受注」テーブルの「顧客ID」フィールドの上でドロップします。
- 4. 「リレーションシップの編集」ダイアログが表示されるので、「参照整合性の強制」にチェックを入れ、「作成」をクリックします。これにより、存在しない顧客IDの受注データが誤って入力されるのを防げます。
- 5. 同様に、「T_商品」と「T_受注明細」、「T_受注」と「T_受注明細」の間も、それぞれ対応するIDフィールドで繋ぎます。
ステップ4:フォームの作成 - 使いやすい「入力画面」を作る
テーブルに直接データを入力するのは、操作ミスを招きやすく、非効率です。
そこで、誰でも簡単かつ安全にデータを入力できるための、専用の「入力フォーム」を作成します。
- 1. 「作成」タブの「フォームウィザード」をクリックします。
- 2. ベースとなるテーブルとして「T_顧客」を選択し、フォームに表示したいフィールドをすべて選びます。
- 3. レイアウト(通常は「単票形式」)や、フォームのデザインを選択し、ウィザードを完了させます。
たったこれだけで、テキストボックスやラベルが整然と配置された、美しいデータ入力フォームが自動で生成されます。
ステップ5:クエリの作成 - データベースに「質問」する
蓄積されたデータから、価値ある情報を引き出すのが「クエリ」の役割です。
【例:特定の顧客の購入履歴を抽出するクエリ】
- 1. 「作成」タブの「クエリデザイン」をクリックします。
- 2. 必要なテーブル(この場合は4つすべて)を追加します。テーブルはリレーションシップで繋がれています。
- 3. 表示したいフィールド(例:T_顧客.氏名, T_受注.受注日, T_商品.商品名, T_受注明細.数量)を、下のデザイングリッドにドラッグ&ドロップします。
- 4. 「T_顧客」の「氏名」フィールドの「抽出条件」行に、`[検索したい顧客名を入力]`と入力します。
このクエリを実行すると、「検索したい顧客名を入力」というダイアログが表示され、名前を入力すると、その顧客の購入履歴だけが、一覧で表示されます。
ステップ6:レポートの作成 - きれいな「帳票」を印刷する
最後に、クエリで抽出したデータを基に、印刷に適した「レポート」を作成します。
「作成」タブの「レポートウィザード」を使い、先ほど作成したクエリをデータソースとして選択すれば、画面の指示に従うだけで、グループ化や集計が行われた、プロフェッショナルな見た目の売上レポートや請求書を、簡単に作成できます。
まとめ - Accessは、あなたのビジネスを成長させる「システム」である
Microsoft Accessは、単なる表計算ソフトではありません。
それは、あなた自身の業務に合わせて、テーブル、クエリ、フォーム、レポートという4つの部品を自由に組み合わせ、あなただけの「業務管理システム」を、プログラミングの知識なしに構築できる、非常に強力で、創造的なツールなのです。
- 1. 思想を理解する:
Accessの神髄は、データを種類ごとにテーブルに分割し、関連付ける「リレーショナルデータベース」の考え方にあります。
これにより、データの重複と矛盾をなくします。
- 2. 設計図を描く:
データベース作成の成否は、最初の「テーブル設計」で9割決まります。
どのような情報を、どのように分割して管理するか、じっくりと考えましょう。
- 3. 4つのオブジェクトを使いこなす:
テーブルでデータを格納し、クエリで抽出し、フォームで入力し、レポートで出力する。
この4つのオブジェクトの役割を理解すれば、Accessはあなたの意のままに動きます。
Excelでの場当たり的なデータ管理に限界を感じている、すべてのビジネスオーナーや、担当者の皆様。
ぜひ、Accessの扉を開いてみてください。
最初は少し難しく感じるかもしれませんが、その先には、あなたのビジネスを、より効率的に、より正確に、そしてより大きく成長させてくれる、無限の可能性が広がっています。
もし、あなたの業務に最適なデータベースの設計や、具体的な作成手順で、専門家のアドバイスが必要になったなら、いつでも私たちにご相談ください。
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