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2025.4.24

ノートパソコンのBIOSアップデート:必要性とリスク

ノートパソコンのお役立ち情報

記事の最終更新日:2025年7月11日

質問する若い女性
BIOSアップデートって、やった方がいいの?

使っているノートパソコンのメーカーの公式サイトを見ていたら、「BIOSアップデート」というファイルが公開されているのを見つけました。

説明には「システムの安定性を向上させます」といったことが書かれているのですが、今のところ、特にパソコンに不具合は感じていません。

BIOSという言葉自体が、なんだか難しくて、触るのが怖いイメージがあります。

でも、「アップデート」というからには、適用した方が良いのでしょうか?

そもそもBIOSアップデートとは何なのか、どんな時に必要で、どんなリスクがあるのか、専門家の視点から詳しく知りたいです。

解説する博識な男性
パソコン専門店のスタッフ

その疑問、そして、その慎重さこそ、PCを扱う上で最も重要な資質です。

あなたは、PCの最も深層で、そして最もデリケートな部分に触れようとしています。

BIOS(バイオス)、そしてその現代版であるUEFI(ユーイーエフアイ)のアップデートは、例えるなら、人間の「脳外科手術」のようなもの。

明確な目的と、万全の準備のもとで実行すれば、これまで解決しなかった問題を治癒させたり、新たな能力を覚醒させたりできます。

しかし、不必要に、あるいは不注意にメスを入れれば、PCそのものの生命活動を、二度と回復不可能な形で停止させてしまう、極めて高いリスクを伴うのです。

プロの世界には、「壊れていないものは、直すな(If it ain't broke, don't fix it.)」という、黄金律があります。

この記事では、その黄金律を大原則として、BIOSアップデートという「手術」が、本当に必要なのはどんな時なのか、そこにどんなリスクが伴うのか、そして、もし実行すると決断した場合に、失敗を100%回避するための、完璧な「術前準備」と「執刀手順」の全てを、体系的に解説していきます。

BIOS/UEFIとは何か? - PCの「生命維持装置」であり「意識」である

私たちが普段使っているWindowsやmacOSといったオペレーティングシステム(OS)が、PCの「知能」だとすれば、BIOS(Basic Input/Output System)や、その進化版であるUEFI(Unified Extensible Firmware Interface)は、PCが電源投入後にOSを起動させるまでの、最も根源的なお作法を司る、「生命維持装置」であり、ハードウェアの「初期意識」です。

あなたがPCの電源ボタンを押した瞬間、最初に目を覚ますのが、このBIOS/UEFIです。

BIOS/UEFIは、CPU、メモリ、ストレージといった、接続されている全てのハードウェアを点検・初期化し(このプロセスをPOST: Power-On Self-Testと呼びます)、そして、どのストレージから、どのOSを起動するのかを決定し、そのOSへと制御を渡します。

この一連の、PCが「目覚める」ための重要なプロセスは、全てマザーボード上に搭載された、専用のフラッシュメモリチップに書き込まれた、ファームウェア(※注釈:ハードウェアを直接制御するための、ソフトウェアとハードウェアの中間に位置するプログラム)によって実行されています。

BIOSアップデートとは、この最も根源的なプログラムを、新しいバージョンへと書き換える、極めてデリケートな行為なのです。

第一章:メスを入れるべき時 - BIOSアップデートが「必要」となる4つのシナリオ

「壊れていないものは、直すな」という原則の通り、あなたのPCが現在、何の問題もなく安定して動作しているのであれば、基本的にBIOSアップデートを行う必要は一切ありません。

「新しいバージョンが出ているから」というだけの理由で、安易にアップデートを行うべきではありません。

BIOSアップデートが、リスクを冒してでも実行する価値を持つのは、以下のような、明確で、かつ具体的な目的がある場合に限られます。

シナリオ1:新しいハードウェアへの対応

これは、BIOSアップデートの最も正当な理由の一つです。

PCの発売後に登場した、新しい世代のハードウェアを認識・サポートするために、BIOSアップデートが必要となる場合があります。

  • 新しいCPUへの対応: (主にデスクトップPCですが)マザーボードが対応する、より新しい、あるいは高性能なCPUに換装する際に、そのCPUをBIOSが正しく認識するために、アップデートが必須となることがあります。
  • メモリ互換性の向上: 特定の大容量、あるいは高クロックなメモリとの互換性が向上したり、これまで認識しなかったメモリが使えるようになったりします。
  • 新しいストレージ規格への対応: 例えば、古いマザーボードで、最新の高速なNVMe SSDからOSを起動できるようにするために、BIOSアップデートが必要となるケースがあります。

シナリオ2:深刻なセキュリティ脆弱性の修正

これが、能動的にアップデートを検討すべき、最も重要な理由です。

過去に、「Spectre」や「Meltdown」といった、CPUの設計自体に起因する、深刻な脆弱性が発見された際、その根本的な対策の一部として、BIOS(マイクロコード)のアップデートが提供されました。

お使いのPCメーカーのサポートサイトで、あるBIOSアップデートのリリースノートに、「Security Vulnerability」や「Intel ME/AMD PSP update」といった、セキュリティに関する記述がある場合は、内容をよく確認し、アップデートを強く検討すべきです。

シナリオ3:特定の不具合の修正

あなたのPCで、現在、特定の、そして再現性のある不具合(例:「特定のUSB機器を接続するとスリープから復帰できない」「高負荷時に、理由なく再起動することがある」など)が発生している場合。

そして、メーカーが提供するBIOSアップデートのリリースノートに、まさにその不具合を修正する旨の記述(例:「Fixed an issue with system stability under heavy load.」)がある場合。

この時、BIOSアップデートは、あなたの問題を解決するための、的確な処方箋となります。

シナリオ4:新機能の有効化とOSの互換性確保

BIOSアップデートによって、これまで利用できなかった、ハードウェアの新機能が有効になることがあります。

その最も代表的な例が、Windows 11へのアップグレードです。

Windows 11のインストール要件である「TPM 2.0」や「セキュアブート」は、ハードウェア的には対応しているにも関わらず、古いBIOSでは、その設定項目自体が隠されていたり、デフォルトで無効になっていたりすることがあります。

BIOSを最新版にアップデートすることで、これらの設定項目が現れ、有効化できるようになり、結果として、Windows 11への道が開ける、というケースは非常に多いです。

第二章:絶対的な禁忌 - BIOSアップデートの致命的リスク

BIOSアップデートは、成功すれば多くの恩恵をもたらしますが、失敗した時の代償は、他のどのソフトウェアアップデートよりも、遥かに大きく、そして取り返しがつきません。

そのリスクの根源は、アップデートプロセスの「不可逆性」と「無防備さ」にあります。

アップデート中、PCは、マザーボード上のフラッシュメモリチップに保存された、古いBIOSデータを一度「消去」し、そこに新しいデータを「書き込む」という、極めて無防備な状態に晒されます。

この、ほんの数分間のプロセスが、何らかの理由で中断された場合、マザーボードは、自身の「意識」であるBIOSを完全に失い、二度と目を覚ますことはありません。

これが、PCが、ただの石や金属の塊、すなわち「**文鎮**」と化す、「**Bricking(文鎮化)**」と呼ばれる、最悪の事態です。

文鎮化してしまったPCを、ユーザー自身が復旧させることは、ほぼ不可能です。

マザーボードの交換という、極めて高額な修理が必要となります。

この悲劇を引き起こす、最大の原因は、以下の二つです。

  • アップデート中の電源喪失: アップデートプロセス中に、停電が発生したり、あるいはノートパソコンのバッテリーが切れたり、ACアダプターが抜けたりすること。これが、失敗の最も一般的な原因です。
  • 不適切なBIOSファイルの適用: 自身のPCのモデルと、完全に一致しない、別のモデル用のBIOSファイルを誤って適用してしまうこと。これは、人間に、別の動物の脳を移植するようなもので、ほぼ確実に、致命的な結果を招きます。

第三章:失敗率ゼロを目指す - 完璧な術前準備プロトコル

BIOSアップデートを実行すると決断した場合、その成功率を99.9%以上に高めるための、厳格な「術前準備」が不可欠です。

以下のチェックリストを、一つずつ、確実に実行してください。

  1. 【自己問答】本当に、今、アップデートは必要か?: 再度、第一章の4つのシナリオに、自身の状況が明確に合致するかを自問します。明確な目的がないなら、ここで中断すべきです。
  2. 【機種の特定】自身のPCの「正確な」モデル名と、現在のBIOSバージョンを確認する: 「ファイル名を指定して実行」(`Win + R`)から、「`msinfo32`」と入力して「システム情報」を起動します。「システムモデル」と「BIOSバージョン/日付」の項目を、正確にメモします。これが、正しいファイルを探すための、最も重要な情報です。
  3. 【ファイルの入手】メーカーの「公式サイト」からのみ、BIOSファイルをダウンロードする: Googleなどで検索して見つかった、非公式サイトからのダウンロードは絶対に避けてください。必ず、お使いのPCメーカーのサポートページにアクセスし、先ほど調べた正確なモデル名で検索し、最新のBIOSアップデートファイルをダウンロードします。
  4. 【文書の熟読】リリースノート(変更履歴)を、必ず読む: ダウンロードページにある、そのアップデートが「何を」修正し、「何を」改善するのかを記述した、リリースノートを熟読します。自分の期待する修正が含まれているかを確認します。
  5. 【保険】PC全体の完全なバックアップを取得する: BIOSアップデート自体は、ユーザーデータを消去しません。しかし、万が一、アップデート後にOSが不安定になる、といった事態に備え、OS、設定、アプリ、全てのデータを含む「システムイメージバックアップ」を、外付けドライブに作成しておくことを、強く推奨します。
  6. 【生命線】安定した電源を確保する: ノートパソコンの場合は、**バッテリーを100%まで充電し、かつ、ACアダプターをコンセントに接続した状態**で、作業に臨みます。デスクトップPCの場合は、UPS(無停電電源装置)があれば、それに接続するのが理想です。
  7. 【暗号化の一時停止】BitLockerを中断する: もし、ドライブをBitLockerで暗号化している場合、アップデートプロセスとの競合を避けるため、事前に、コントロールパネルから、BitLockerの保護を「中断」しておきます。アップデート完了後に、再度有効化します。

第四章:執刀手順 - 安全なBIOSアップデートの実行方法

準備が整ったら、いよいよアップデートを実行します。

実行方法には、主に二つの方式があります。

【方法1(最も安全):BIOS/UEFI内蔵のフラッシュ機能を利用する】

これは、Windowsを介さず、BIOS/UEFI自身の機能を使ってアップデートを行う、最も安全で、専門家が推奨する方法です。

  1. ・ダウンロードしたBIOSファイルを、FAT32形式でフォーマットしたUSBメモリの、ルートディレクトリにコピーします。
  2. ・そのUSBメモリをPCに挿したまま、PCを再起動し、特定のキー(`F2`, `F10`, `Delete`など、メーカーによる)を連打して、BIOS/UEFI設定画面に入ります。
  3. ・BIOS/UEFIメニューの中から、「BIOS Update」や「EZ Flash」、「M-Flash」といった、アップデート用の機能を探し、起動します。
  4. ・機能が起動したら、USBメモリ内に保存した、正しいBIOSファイルを選択し、画面の指示に従って、アップデートを実行します。

この方法では、アップデートプロセスが、OSや他のソフトウェアからの干渉を一切受けない、クリーンな環境で実行されるため、失敗のリスクを最小限に抑えることができます。

【方法2(より簡便):Windows上で実行するアップデートユーティリティ】

メーカーによっては、Windows上で実行するだけで、自動的に再起動し、BIOSをアップデートしてくれる、専用のユーティリティを提供している場合があります。

この方法は非常に手軽ですが、OSが動作している上で実行するため、バックグラウンドで動作する他のプロセスや、セキュリティソフトなどとの、予期せぬ競合のリスクが、ゼロではありません。

もしこの方法を選択する場合は、実行前に、起動している全てのアプリケーションを終了し、セキュリティソフトも一時的に無効にするなど、可能な限り、クリーンな状態で実行することが望まれます。

アップデートが開始されると、PCは自動的に再起動し、アップデートプロセスが進行します。

この間、画面が真っ暗になったり、数回再起動を繰り返したりしますが、プロセスが完了するまで、絶対に、電源ボタンに触れたり、ACアダプターを抜いたりしてはいけません。

静かに、そして忍耐強く、PCが再びWindowsのデスクトップを表示するのを待つのです。

まとめ:BIOSアップデートは、恐怖ではなく、知識と敬意をもって向き合うべき「儀式」である

ノートパソコンのBIOSアップデートは、PCの根源的な部分に触れる、神聖で、かつ危険な「儀式」です。

その実行には、単なる好奇心ではなく、明確な目的意識と、ハードウェアに対する深い敬意、そして、失敗のリスクを限りなくゼロに近づけるための、周到な知識と準備が求められます。

  1. 目的を自問する: 「なぜ、アップデートするのか?」その問いに、ハードウェアのサポート、セキュリティ、特定の不具合修正といった、明確な答えがないのであれば、あなたの答えは「今は、何もしない」です。
  2. 敵と己を知る: あなたのPCの「正確なモデル名」と「現在のBIOSバージョン」を知り、メーカー公式サイトから、「正しいファイル」と「リリースノート」を入手する。情報収集こそが、最大の防御です。
  3. 最悪を想定し、最善を尽くす: 理由の如何を問わず、作業前には「完全なバックアップ」と「安定した電源」を確保する。この二つが、あなたを後悔から守る、生命線となります。
  4. 最も安全な道を選ぶ: 可能であれば、常に、BIOS/UEFIに内蔵された、オフラインのアップデート機能を利用する。これが、失敗のリスクを最小化するための、プロフェッショナルの選択です。

BIOSアップデートは、決して、日常的に行うべきメンテナンスではありません。

しかし、その必要性とリスクを正確に天秤にかけ、正しい手順を踏むことができる知識は、あなたのPCを、より長く、より安全に、そして、より高いパフォーマンスで使い続けるための、真のパワーユーザーの証となるでしょう。

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