
Windows 11でのメモリ管理:パフォーマンス維持のための設定とコツ
Windowsのお役立ち情報

記事の最終更新日:2025年7月10日
購入した当初はサクサク動いていたWindows 11のパソコンが、最近、特にWebブラウザのタブをたくさん開いたり、いくつかのアプリを同時に使ったりすると、急に動作が重くなるんです。
タスクマネージャーという画面を開いてみたら、「メモリ」という項目の使用率が真っ赤になっていて、これが原因なのかな?と思っています。
そもそも「メモリ」って、一体何をしている部品なのでしょうか?
このメモリの使用率を上手に管理して、パソコンのパフォーマンスを快適な状態に保つための、何か良い設定やコツがあれば、専門家の視点から教えてほしいです。
その問題に気づかれたとは、素晴らしい観察眼です。
パソコンのパフォーマンスにおける、最も重要で、そして最も誤解されがちな要素、それが「メモリ(RAM)」です。
メモリとは、いわばパソコンの「作業机の広さ」。
机が広ければ多くの書類や道具(アプリやデータ)を同時に広げて快適に作業できますが、机が狭いと、いちいち棚(ストレージ)から書類を出し入れする必要があり、作業効率は劇的に落ちます。
あなたのPCで起きているのは、まさにこの「机の上が散らかって、棚との往復が頻発している」状態なのです。
この記事では、まずタスクマネージャーやリソースモニターといった診断ツールを使い、あなたの「作業机」の状態を正確に把握する方法を学びます。
その上で、不要な常駐ソフトの整理から、仮想メモリという「予備の作業台」の最適化、そしてWindows 11の先進的なメモリ管理機能の解説まで、あなたのPCのパフォーマンスを蘇らせるための、体系的な知識と技術の全てを伝授します。
メモリ管理の重要性:なぜ「作業机」の広さがPCの速度を決めるのか
パソコンの頭脳であるCPUがどれだけ高速でも、実際に処理するデータを置いておく「場所」がなければ、その性能を十分に発揮することはできません。
その場所こそが、メモリ(RAM: Random Access Memory)です。
メモリは、SSDやHDDといったストレージ(倉庫)に比べて、桁違いに高速なデータの読み書きが可能です。
アプリケーションの起動、ファイルの編集、Webページの表示など、PCが行うあらゆる動作は、まずストレージから必要なデータをメモリ上に読み込み(作業机に広げ)、CPUがそれを処理し、結果を再びメモリに書き込む、という流れで行われます。
しかし、このメモリの容量には限りがあります。
多くのアプリケーションを同時に起動し、メモリが満杯に近づくと、Windowsは「メモリが足りない!」と判断し、メモリ上にある使用頻度の低いデータを、低速なストレージに一時的に退避させる「スワップ」という動作を始めます。
これが、PCの動作が急に重くなる、いわゆる「スラッシング」現象の正体です。
したがって、PCのパフォーマンスを維持するとは、この貴重なメモリという資源をいかに効率的に管理し、不必要なスワップを発生させないようにするか、という技術に他なりません。
第一章:現状分析 - 高度なツールでメモリの使用状況を丸裸にする
最適化の第一歩は、現状を正確に把握することから始まります。
Windows 11には、メモリの使用状況を詳細に分析するための強力なツールが標準で搭載されています。
タスクマネージャー「パフォーマンス」タブの読解術
「Ctrl + Shift + Esc」キーでタスクマネージャーを起動し、「パフォーマンス」タブの「メモリ」を選択します。
ここに表示されるグラフと数値は、あなたのPCのメモリ事情の全てを物語っています。
- ・使用中(圧縮): 現在アプリケーションやOSが使用しているメモリの量です。カッコ内の「圧縮」とは、Windowsがメモリを節約するために、使用頻度の低いデータを圧縮して保持している量を示します。これは、ストレージに書き出すより高速な、賢い節約術です。
- ・コミット済み: 現在システムが確保している仮想メモリの総量です。左側の数値が実際に使用中の量、右側の数値がページファイルを含めた確保済みの最大量を示します。この左側の数値が物理メモリの搭載量に近づくと、パフォーマンスの低下が始まります。
- ・キャッシュ済み: 一度使ったファイルなどを、再利用に備えて一時的に保持しているメモリ領域です。これは「空き」とは異なりますが、必要に応じて即座に解放されるため、この数値が大きいことは、むしろメモリが効率的に使われている証拠です。
- ・ページプールと非ページプール: OSのカーネル(中核部分)が使用する、特殊なメモリ領域です。通常、ユーザーが直接意識する必要はありませんが、ドライバーの不具合などでこの領域が異常に増大することがあります。
リソースモニター:メモリ負荷の犯人を特定する
タスクマネージャーのパフォーマンス画面の下部にある「リソースモニターを開く」をクリックすると、より詳細な分析ツールが起動します。
「メモリ」タブを選択し、「物理メモリ」のグラフに注目してください。
ここで重要なのが、グラフの下にある「ハードフォールト/秒」の表示です。
ハードフォールトとは、プログラムが必要とするデータがメモリ上に見つからず、低速なストレージ(ページファイル)まで探しに行かなければならなかった回数を示します。
この数値が常に高く、グラフが頻繁に上下している場合、あなたのPCは慢性的なメモリ不足に陥っており、パフォーマンスが大幅に低下していることを意味します。
また、プロセス一覧では、各プロセスがどれだけのハードフォールトを発生させているかまで特定できるため、メモリ不足の直接的な原因となっているアプリケーションを突き止めることができます。
第二章:ソフトウェア的アプローチ - アプリケーションの挙動を制御する
診断によってメモリを圧迫している原因が見えてきたら、次はその消費量を抑えるための具体的な対策を講じます。
スタートアップアプリの厳選:PC起動時の「同伴者」を減らす
PCを起動すると、Windows本体だけでなく、多くのアプリケーションがユーザーの目に触れないところで自動的に起動し、メモリを消費し始めます。
「設定」>「アプリ」>「スタートアップ」を開き、一覧を確認してください。
本当に常に起動している必要があるアプリ(例:セキュリティソフト)以外は、ためらわずに無効化しましょう。
特に、「影響:大」と表示されているアプリを無効化する効果は絶大です。
これにより、PC起動直後のメモリ使用量が大幅に削減され、動作が軽快になります。
ブラウザのメモリ管理:タブの開きすぎと戦う
現代のPCにおいて、メモリ消費の最大の原因となりがちなのがWebブラウザです。
多数のタブを開けば、その分だけメモリは消費されていきます。
Microsoft EdgeやGoogle Chromeといった主要なブラウザには、この問題に対処するための機能が搭載されています。
例えば、「スリーピングタブ(非アクティブなタブのメモリを解放する機能)」や「メモリセーバー」といった設定を有効にすることで、使用していないタブのメモリ消費を自動で抑えることができます。
これらの機能を最大限に活用し、意識的に不要なタブを閉じる習慣をつけることが重要です。
視覚効果の調整:見た目の美しさとパフォーマンスのトレードオフ
Windows 11の美しい半透明効果やアニメーションも、僅かながらメモリとグラフィック性能を消費します。
メモリが少ないPCで、少しでもパフォーマンスを稼ぎたい場合は、これらの視覚効果を無効化するのも一つの手です。
「設定」>「システム」>「バージョン情報」>「システムの詳細設定」と進み、「パフォーマンス」セクションの「設定」ボタンを押します。
「パフォーマンスを優先する」を選択すれば、全ての視覚効果が一括で無効になり、最もリソース消費の少ない、クラシックな表示になります。
第三章:OSの深層設定 - 仮想メモリとシステムサービスの最適化
ここからは、Windows 11のメモリ管理の根幹に関わる、より高度な設定に踏み込みます。
操作を誤るとシステムの不安定化を招く可能性もあるため、内容をよく理解した上で、慎重に設定してください。
仮想メモリ(ページファイル)の徹底解説と都市伝説
仮想メモリとは、物理的なメモリが不足した際に、ストレージ(SSD/HDD)の一部をメモリの代わりとして使用する仕組みです。
このために確保されるファイルが「`pagefile.sys`」です。
インターネット上では、「物理メモリをたくさん積んでいるなら、仮想メモリは無効化した方が速くなる」という情報が見られますが、これは**現代のWindowsにおいては、ほぼ間違いなく都市伝説**です。
Windowsや多くのアプリケーションは、仮想メモリが存在することを前提に設計されており、これを無効にすると、かえってシステムの不安定化や、特定のソフトが起動しないといった問題を引き起こす可能性があります。
基本的には、「すべてのドライブのページングファイルのサイズを自動的に管理する」というデフォルト設定のままにしておくのが最も安全で、多くの場合、最もパフォーマンスも安定します。
ただし、複数のドライブを搭載している上級者に限り、低速なHDDに作成されているページファイルを、高速なSSDに手動で移動させるといったチューニングは、一定の効果が見込める場合があります。
Superfetch(SysMain)の功罪と正しい付き合い方
Superfetch(現在のサービス名はSysMain)は、ユーザーのアプリケーション使用パターンを学習し、頻繁に使うアプリを、実際に起動する前から先読みしてメモリ上に展開しておくことで、体感的な起動速度を向上させる機能です。
タスクマネージャーでメモリ使用率が高い時、その多くが「キャッシュ済み」となっているのは、このSuperfetchの働きによるものです。
これも、「メモリを無駄に消費しているから無効にすべき」という情報がありますが、これも多くの場合、誤解です。
キャッシュされたメモリは、他のアプリがメモリを必要とすれば即座に解放されるため、システムの動作を妨げることはありません。
むしろ、SSDの普及した現代においては、ストレージからの読み込みを減らし、システムの応答性を高める有益な機能とされています。
極端に古いPCや、特定のゲームなどで問題が発生する場合を除き、基本的には有効のままにしておくことを推奨します。
第四章:究極の解決策 - ハードウェアによる物理的な拡張
あらゆるソフトウェア的なチューニングを行っても、根本的なメモリ不足が解消しない場合、残された道は一つです。
それは、「作業机」そのものを、物理的に大きくすること、すなわちメモリの増設です。
2025年現在、一般的な事務作業やWebブラウジングが中心であれば16GB、複数のアプリを多用するクリエイティブな作業や、PCゲームを快適に楽しみたいのであれば32GBのメモリを搭載していることが、一つの快適な基準と言えるでしょう。
お使いのノートパソコンがメモリ増設に対応しているか、最大で何GBまで認識するのかは、モデルによって異なります。
中には、メモリがマザーボードに直接半田付けされており、交換が不可能なモデルも存在します。
メモリの増設を検討する際は、まずはお使いのPCの仕様を正確に調べ、適合するメモリの種類(例:DDR4, DDR5)や規格を確認する必要があります。
こうしたハードウェアのアップグレードに関しても、我々のような専門店にご相談いただければ、最適なご提案をさせていただきます。
まとめ:メモリ管理とは、PCとの対話によるパフォーマンスの調律である
Windows 11のメモリ管理は、OSが自動で高度な最適化を行ってくれる、非常に洗練されたシステムです。
しかし、ユーザーがその仕組みを理解し、自身の使い方に合わせて適切に「調律」してあげることで、そのパフォーマンスをさらに引き出すことが可能です。
- ・まず現状を正しく知る: タスクマネージャーやリソースモニターを使いこなし、「何が」メモリを消費し、「なぜ」パフォーマンスが低下しているのかを、データに基づいて正確に診断する能力が全ての基本です。
- ・ソフトウェアの贅肉を削ぎ落とす: 不要なスタートアップアプリの無効化や、ブラウザのメモリ節約機能の活用は、誰でも簡単に実行できる、最も効果的な対策の一つです。
- ・OSの挙動を理解し、誤った神話を信じない: 仮想メモリやSuperfetchといった機能を正しく理解し、無効化することが必ずしもプラスに働くわけではないことを知る。これが、中級者から上級者へとステップアップするための鍵です。
- ・ソフトウェアの限界を知り、ハードウェアを見据える: ソフトウェアによる最適化には限界があります。根本的な解決には、メモリの増設という物理的なアプローチが、最終的に最も効果的であることを認識しておくことが重要です。
PCのパフォーマンスは、OS、アプリケーション、そしてユーザーであるあなたの使い方、この三者の相互作用によって決まります。
この記事を通じて、ぜひあなたのPCとの対話を深め、最高のパフォーマンスを引き出すための「名指揮者」となってください。

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