
Mac OSのターミナルコマンドで隠れた機能にアクセスする方法
MacOSのお役立ち情報

記事の最終更新日:2025年7月11日
Macを使いこなしている人って、時々、ハッカーみたいに黒い画面に謎の文字を打ち込んで、何かを操作していますよね。
あれは「ターミナル」というアプリらしいのですが、見ていると、なんだか魔法みたいで、すごく格好いいな、と思います。
私も、システム設定の画面からは変更できないような、もっとマニアックなカスタマイズをしてみたいんです。
例えば、普段は見えない隠しファイルを常に表示させたり、スクリーンショットの影を消したり…。
プログラマーじゃなくても、このターミナルという「魔法」を、安全に、そして便利に使うことって、できるのでしょうか?
その「魔法」の正体、知りたくなりましたか。
素晴らしい探求心です。
あの黒い画面、すなわち「ターミナル」は、macOSの美しい見た目の裏に隠された、強力無比な「OSの心臓部」へと、直接アクセスするための、秘密の扉なのです。
普段私たちが使っているマウス操作は、いわば、OSに対して、丁寧な言葉で「お願い」している状態。
しかし、ターミナルは、OSが理解できる、直接的で、疑う余地のない「命令」を下す場所です。
そこには、システム設定のGUI(グラフィカルな画面)には決して現れない、無数の隠された設定項目や、強力な機能が眠っています。
この記事では、そのターミナルという秘密の扉の開き方から、最も安全で、かつ効果的な、カスタマイズの「呪文(コマンド)」、そして、その強大な力に伴うリスクまで、あなたが、あなたのMacの、真の「支配者」となるための、全ての知識と作法を、伝授しましょう。
ターミナルの思想:それはGUIという「翻訳」を介さない、OSとの「直接対話」
私たちが普段、マウスやトラックパッドを使って、アイコンをクリックしたり、メニューを選択したりして行っている操作。
それは、OSの複雑な機能を、人間が直感的に理解できるように、美しく、そして分かりやすく「翻訳」してくれている、GUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェース)という、親切な通訳者を介した、コミュニケーションです。
一方、ターミナルは、この通訳者を介さず、OSの根幹をなすUNIXというシステムが理解できる、ネイティブな「言語(コマンド)」を使って、直接、対話を行う場所です。
通訳者を介さないため、その命令は、より直接的で、より高速で、そして、メニューには用意されていない、遥かに詳細で、広範な操作を可能にします。
しかし、それは同時に、誤った命令が、システムに、より深刻な、そして直接的なダメージを与える可能性をも、内包しています。
ターミナルを学ぶということは、この、計り知れないほどの「力」と、それに伴う「責任」の両方を、正しく理解し、敬意をもって、その力を振るうための、作法を学ぶことに他なりません。
【最重要警告】ターミナルで実行するコマンド、特に、インターネット上で見つけた、意味の分からないコマンドは、あなたのMacのシステムを、回復不可能な形で破壊する可能性があります。この記事で紹介するコマンドを実行する前には、必ず、そのコマンドが「何を」行うのかを理解し、そして、Time Machineなどで、システムの完全なバックアップを取得しておくことを、強く、強く推奨します。
第一章:万能の鍵「defaults」コマンド - Macの隠し設定を書き換える
Macのアプリケーションや、OS自身の、多くの挙動や設定は、「`.plist`」という、設定ファイルに書き込まれています。
そして、この設定ファイルの内容を、ターミナルから、安全に読み書きするために用意された、万能の鍵となるコマンドが、「`defaults`」コマンドです。
このコマンドの基本的な構文は、以下の通りです。
- ・設定の読み取り: `defaults read [対象ドメイン] [設定キー]`
- ・設定の書き込み: `defaults write [対象ドメイン] [設定キー] -[型] [設定値]`
- ・設定の削除(デフォルトに戻す): `defaults delete [対象ドメイン] [設定キー]`
「対象ドメイン」とは、`com.apple.finder`(Finderの設定)や`com.apple.dock`(Dockの設定)といった、設定を管理している、逆引きドメイン形式の名前のことです。
この`defaults`コマンドを使いこなすことが、Macを、あなただけの、究極のパーソナルマシンへと、カスタマイズするための、第一歩となります。
なお、多くの設定変更は、対象のアプリケーションを再起動することで、初めて反映されます。
FinderやDockの場合は、「`killall Finder`」や「`killall Dock`」というコマンドを実行することで、プロセスを強制的に再起動させ、変更を即座に適用できます。
Finderのカスタマイズ:日々のファイル操作を快適にする
毎日、誰もが使うFinder。
その使い勝手を、いくつかのコマンドで、劇的に向上させましょう。
【隠しファイルやフォルダを常に表示する】
通常、macOSは、重要なシステムファイルなどを、ユーザーが誤って削除しないように、不可視に設定しています。
しかし、設定ファイルの編集などを行うパワーユーザーにとっては、これらが常に見えている方が、便利な場合があります。
defaults write com.apple.finder AppleShowAllFiles -bool true killall Finder
(元に戻す場合は、末尾の`true`を`false`にします)
【Finderのタイトルバーに、ファイルのフルパスを表示する】
現在開いているフォルダの、階層構造の全体像(フルパス)を、常にウィンドウのタイトルバーに表示させます。
defaults write com.apple.finder _FXShowPosixPathInTitle -bool true killall Finder
(元に戻す場合は、末尾の`true`を`false`にします)
【「情報をみる」で、テキストを選択・コピー可能にする】
ファイルを右クリックして「情報をみる」で表示されるウィンドウ内のテキストは、通常、コピーできません。
これを、選択・コピー可能にする、地味ながら非常に便利な設定です。
defaults write com.apple.finder QLEnableTextSelection -bool true killall Finder
Dockのカスタマイズ:見た目と挙動を微調整する
Dockの使い勝手も、`defaults`コマンドで、さらに洗練させることができます。
【隠れているアプリケーションのアイコンを半透明にする】
`Command + H`で隠したアプリケーションのアイコンを、Dock上で半透明に表示し、現在アクティブでないことを、視覚的に分かりやすくします。
defaults write com.apple.dock showhidden -bool true killall Dock
【Dockに、空白の「スペーサー」を追加する】
Dock上のアプリアイコンを、種類ごとにグループ分けしたい、といった場合に、空白のスペースを挿入することができます。
defaults write com.apple.dock persistent-apps -array-add '{"tile-type"="spacer-tile";}' killall Dock
(スペーサーを削除するには、Dockから、ドラッグして外に出します)
【Dockが自動で隠れる/表示されるまでの、アニメーション時間をなくす】
Dockを自動で隠す設定にしている場合、マウスカーソルを画面下部に移動させた際の、にゅっと表示されるアニメーションを無効化し、瞬時に表示させることができます。
defaults write com.apple.dock autohide-time-modifier -float 0 killall Dock
(`0`を`0.5`などにすれば、よりゆっくり表示させることも可能です。削除すればデフォルトに戻ります)
第二章:システム管理と診断のコマンド
ターミナルは、カスタマイズだけでなく、システムのメンテナンスや、状態の診断を行う上でも、非常に強力なツールです。
スリープを妨げる:「`caffeinate`」コマンド
長大なファイルのダウンロード中や、プレゼンテーション中など、Macに、意図的にスリープしてほしくない、という場面があります。
「`caffeinate`」コマンドは、まさに、その名の通り、Macに「カフェイン」を注入し、眠らないようにさせるコマンドです。
ターミナルで、このコマンドを実行している間、Macは、省電力設定を無視して、スリープしなくなります。
`Ctrl + C`を押すことで、コマンドは終了し、通常の省電力設定に戻ります。
「`caffeinate -d`」と実行すれば、システムのスリープは許可しつつ、ディスプレイだけがスリープするのを防ぐ、といった、細かい制御も可能です。
ソフトウェア・アップデートの実行:「`softwareupdate`」コマンド
システム設定を開かなくても、ターミナルから、macOSのアップデートを確認し、インストールすることができます。
まず、利用可能なアップデートを一覧表示します。
softwareupdate -l
そして、全ての利用可能なアップデートを、インストールするには、以下のコマンドを実行します。(管理者パスワードが必要です)
sudo softwareupdate -i -a
ディスクの空き容量を確認する:「`df`」と「`du`」
GUIよりも、素早く、そして詳細に、ディスクの使用状況を確認できます。
「`df -h`」は、接続されている全ディスクの、人間が読みやすい形式(GB単位など)での、空き容量を表示します。
「`du -sh *`」は、現在いるディレクトリ内の、各ファイルやフォルダが、どれだけの容量を占めているかを、一覧で表示してくれます。
ネットワークの状態を診断する:「`ping`」と「`traceroute`」
インターネットの接続が不安定だと感じた時、その原因を切り分けるための、基本的な診断ツールです。
「`ping google.com`」と実行すれば、特定のサーバー(この場合はGoogle)との通信が、確立しているか、そして、通信にかかる時間(遅延、レイテンシー)はどれくらいか、を確認できます。
「`traceroute google.com`」は、あなたのMacから、目的のサーバーまでの、通信が経由する、全てのルーターの道のりを、一覧で表示してくれます。
これにより、ネットワークのどこで、遅延や問題が発生しているのかを、推定することができます。
第三章:さらなる高みへ - Homebrewによる、無限の拡張
ターミナルの真の力は、そのままでも強力ですが、世界中の開発者が作成した、無数のオープンソースのコマンドラインツールを、追加でインストールすることで、まさに無限大に拡張されます。
そして、そのための、現代のMacユーザーにとって、必須のパッケージ管理ツールが、「Homebrew」です。
Homebrewを導入すれば、「`htop`(より高機能なプロセスビューア)」、「`youtube-dl`(YouTube動画のダウンローダー)」、「`imagemagick`(高度な画像処理ツール)」といった、macOSには標準で搭載されていない、ありとあらゆる強力なツールを、「`brew install [ツール名]`」という、極めてシンプルなコマンド一発で、手に入れることができます。
ターミナルを本格的に使いこなしたい、と考えるのであれば、まず、このHomebrewをインストールすることから、あなたの新しい冒険は始まるのです。
まとめ:ターミナルとは、あなたのMacとの「対話の解像度」を上げるための、最高のレンズである
macOSのターミナルは、決して、一部の専門家だけのための、難解な黒魔術ではありません。
それは、あなたが、あなたのMacという、最も身近で、最も強力な道具の、真のポテンシャルを理解し、その隅々までを、あなたの意のままに制御するための、開かれた扉なのです。
- ・`defaults`コマンドで、GUIの「壁」を越える: システム設定の画面には用意されていない、無数の隠された設定項目を、「`defaults write`」という、万能の鍵で、解き放つ。これが、パーソナライズの第一歩です。
- ・コマンドの「意味」を理解し、リスクを尊重する: ターミナルでの操作は、常に、システムへの直接的な介入であることを忘れず、コマンドを実行する前には、それが何をするものなのかを、必ず理解する。そして、必ずバックアップを取る。この慎重さが、あなたをトラブルから守ります。
- ・日常的なタスクに、コマンドの視点を取り入れる: 「スリープさせたくない」→`caffeinate`。「アップデートを確認したい」→`softwareupdate`。日常的な操作を、コマンドで実行する習慣が、あなたの作業効率を、新たなレベルへと引き上げます。
- ・Homebrewで、あなたの「道具箱」を拡張する: macOSの標準機能に満足することなく、Homebrewを通じて、世界中の開発者が磨き上げた、無数の強力なツールを手に入れ、あなたのMacを、あなただけの、最強のワークステーションへと、育て上げましょう。
ターミナルという、OSとの「ネイティブ言語」を学ぶことで、あなたは、もはや、Appleが用意した、親切なGUIという「観光コース」を歩くだけの旅行者ではなくなります。
あなたは、macOSという、広大で、奥深い世界の、あらゆる場所に、自らの意思で到達できる、真の「探検家」となるのです。

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